ネットワーク障害の原因調査やパフォーマンス改善を行う際には、ネットワークトラフィック分析が重要になります。
トラフィック分析では、ネットワーク上を流れる通信データを解析し、通信量・プロトコル・遅延などを可視化することで、ボトルネックや異常通信を特定できます。
トラフィック分析では主に以下の情報を確認します。
- 通信プロトコル
- 通信量(帯域利用率)
- パケット内容
- 通信元・通信先
- アプリケーション通信
本記事では以下の内容を解説します。
- トラフィック分析とは何か
- ネットワーク通信解析の方法
- 代表的なトラフィック分析ツール
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1. ネットワークトラフィック解析とは
トラフィック解析(ネットワークトラフィック分析)とは、ネットワーク上を流れるパケットやフロー情報を収集・可視化し、通信状況やボトルネックを分析する手法です。
解析する主な要素は以下です。
- 帯域利用率(インターフェース単位 / アプリ単位)
- 遅延(RTT)
- パケットロス
- フロー分析(通信元・宛先・アプリケーション)
- トラフィックパターン(時間帯別・ピーク時間)
これらのデータを分析することで、ネットワークの健全性や改善ポイントを明確化できます。
2. トラフィック解析で使用する主な技術
2-1. SNMP(帯域監視・機器統計)
SNMPは、ネットワーク機器のインターフェース帯域使用率、エラー数、CPU負荷などを監視する際に最も一般的に使用される技術です。
- 帯域使用率の可視化
- 突発的な帯域上昇の検出
- 機器障害の兆候検知(エラー増加など)
SNMPは月次レポートやピーク帯域分析にも有効です。

2-2. NetFlow / sFlow / IPFIX(フロー分析)
フロー解析は「どの端末が」「どのサービスに」「どのくらい通信しているか」を把握するための技術です。
解析できる情報:
- 送信元IP / 宛先IP
- アプリケーション識別
- 通信量(Byte / Packet)
- セッション数
フロー分析は、異常通信検知や業務アプリケーションの通信量分析に非常に有効です。

2-3. パケットキャプチャ(詳細な通信解析)
「通信が遅い」「特定アプリだけ重い」などの深い問題は、パケット解析によって原因特定することが多くあります。
調査できる項目:
- TCP再送・遅延ACK
- 3ウェイハンドシェイク異常
- SSL / TLSネゴシエーション時間
- アプリケーションレスポンス時間
主に以下のツールが使用されます。
- Wireshark
- tshark
- tcpdump


3. トラフィック解析で発見できる典型的な問題
3-1. 帯域不足・ネットワーク輻輳
特定時間帯に帯域が飽和している場合、帯域不足またはネットワーク輻輳が疑われます。
原因例:
- バックアップ処理が業務時間と重複
- 大容量ファイル転送
- クラウドサービス利用増加
- 特定アプリケーションの通信暴走
このような問題はSNMP + フロー分析で検知できます。
3-2. 遅延・アプリケーション性能劣化
遅延を引き起こす要因には次のようなものがあります。
- TCP再送(パケットロス)
- WAN回線遅延
- アプリケーション応答遅延
- SSLネゴシエーション遅延
パケットキャプチャを併用することで原因を正確に切り分けできます。

4. トラフィック解析によるネットワーク最適化
4-1. 帯域利用率レポート
- 帯域増速の判断
- トラフィックシェーピング
- バックアップ時間帯調整
- 不要通信制限
4-2. フロー分析によるアプリ最適化
誰が・どのアプリで・どれだけ通信しているかを分析します。
活用例:
- Teams / Zoomトラフィック分析
- クラウドサービス(Office365 / Salesforce)通信量分析
- 不正端末の帯域占有検知
4-3. パケット解析による遅延原因特定
- MTU / MSS調整
- TCPウィンドウサイズ最適化
- WAN最適化装置導入判断
- ファイアウォール遅延確認


5. トラフィック解析ツール
- Wireshark / tshark(パケット解析)
- tcpdump(CLIパケットキャプチャ)
- NetFlow Analyzer / Scrutinizer(フロー分析)
- Zabbix / Cacti / PRTG(SNMP監視)
- Elasticsearch / Kibana(ログ解析)
- Meraki / SD-WAN管理コンソール(クラウド可視化)
特にSD-WAN環境ではトラフィック可視化機能が強力なため、分析効率が大きく向上します。
6. トラフィック解析によるネットワーク改善手順
ステップ1:現状把握(Baseline)
- 帯域利用率
- 遅延・パケットロス
- アプリ別通信量
ステップ2:ボトルネック特定
- ピークトラフィック
- 重いアプリケーション
- 異常通信
ステップ3:改善施策
- 帯域増速
- QoS適用
- VPN最適化
- アプリ改善
ステップ4:改善効果測定
- 帯域利用率変化
- 遅延改善
- ユーザー体感
7. Wiresharkによるトラフィック分析
Wiresharkは、ネットワークトラフィックをリアルタイムでキャプチャし、パケット単位で解析できる代表的なツールです。
通信内容を詳細に確認できるため、以下のような調査に利用されます。
- 通信プロトコルの確認
- TCP再送の確認
- DNS通信の確認
- アプリケーション通信の分析
基本的な分析手順は以下の通りです。
- キャプチャインターフェースを選択
- パケットキャプチャ開始
- フィルタで対象通信を絞り込む
- パケット詳細を確認
代表的なフィルタ例:
tcp
dns
ip.addr == 192.168.1.10
Wiresharkを使用することで、アプリケーション通信の問題やTCPレベルの問題を詳細に分析できます。
8. tcpdumpによるトラフィック分析
tcpdumpは、Linux環境で使用される代表的なパケットキャプチャツールです。
サーバ環境ではGUIツールが使えない場合が多いため、tcpdumpによるトラフィック解析がよく利用されます。
基本的なコマンド例:
tcpdump -i eth0
特定ホストの通信のみ確認する場合:
tcpdump host 192.168.1.10
特定ポート通信の確認:
tcpdump port 443
キャプチャをファイル保存する場合:
tcpdump -i eth0 -w capture.pcap
保存したファイルはWiresharkで詳細分析することも可能です。
tcpdumpを活用することで、サーバ環境でも効率的にトラフィック解析を行えます。

9. まとめ
トラフィック解析は、ネットワーク性能改善や障害防止に欠かせない実務スキルです。
SNMP・フロー分析・パケットキャプチャを組み合わせることで、通信問題の原因を正確に特定できます。
トラフィック分析を継続的に実施することで、ネットワークの安定性向上や障害削減につながります。
