ルーティング切替(経路変更・冗長切替)後に、
「疎通はできるが不安定」「一部通信だけ失敗する」 といった障害が発生することは非常に多くあります。
この手のトラブルは、
ルーティング自体ではなく L2 情報(ARP / MAC / STP)の不整合 が原因であるケースがほとんどです。
本記事では、
なぜルーティング切替後に不安定になるのか を構造から説明し、 現場で即使える確認手順と対処方法 を詳細に解説します。
目次
なぜルーティング切替後に通信が不安定になるのか
ルーティング切替で変わるのは「L3経路」ですが、
L2情報(ARP / MAC / STP)は即座に切り替わりません。
結果として、以下のズレが発生します。
- IPは新ルートへ送られている
- ARPは旧ゲートウェイを指している
- MACテーブルは古い転送先を保持している
- STPが再計算中でポートが揺れている
この「L2とL3の非同期」が通信不安定の正体です。
原因①:ARPキャッシュが古い(最頻出)
起きていること
ルーティング切替後も、端末や機器が
旧ルータのMACアドレスをARPキャッシュに保持しています。
結果、IP的には正しい経路なのに、
フレームが誤った宛先へ送られます。
確認方法
端末側
arp -a
ルータ/L3SW側
show ip arp
異常時の例
- 新しいゲートウェイIPなのにMACが旧機器
- ARPエントリが非常に古い
即効性のある対処
ARPキャッシュクリア
clear arp-cache
clear ip arp
※ 影響があるため、対象を限定して実施します。
恒久対策
- HSRP / VRRP 使用時は Gratuitous ARP が送信されるか確認
- ARPタイマーの適正化
原因②:MACアドレステーブルの不整合
起きていること
ルーティング切替に伴い、
トラフィックの流れが物理的に変化します。
しかしスイッチは、
旧ポートにMACアドレスを学習したままの状態です。
確認方法
show mac address-table
show mac address-table dynamic
異常時の兆候
- 同一MACが想定外ポートに存在
- MACフラッピングが発生
対処方法
MACテーブルクリア
clear mac address-table dynamic
影響最小化のコツ
- VLAN単位でクリア
- 切替直後に実施
原因③:STP再計算・ポート遷移
起きていること
経路切替によりトポロジが変化し、
STPが再計算(Recalculation) を行います。
この間、ポートは以下を遷移します。
- Blocking
- Listening
- Learning
- Forwarding
結果、数秒〜数十秒の通信断・揺らぎが発生します。
確認方法
show spanning-tree
show spanning-tree detail
対処方法(即効性)
- PortFast 設定(エッジポート)
- 不要なSTP再計算を防止
恒久対策
- Root Bridge を明示的に設計
- STP設計の固定化
実務向け切り分け手順(この順番が重要)
- pingで疎通の揺らぎを確認
- ARPキャッシュ確認 → 必要ならクリア
- MACテーブル確認 → 不整合があればクリア
- STP状態確認(再計算中でないか)
- 再度疎通確認
よくある誤解
- 「ルーティングが正しいから問題ない」
- 「ログが出ていないから正常」
L2の情報はログに出にくいため、 目視確認が不可欠です。
まとめ
- ルーティング切替後の不安定はL2起因が大半
- ARP・MAC・STPは即座に切り替わらない
- キャッシュクリアとSTP設計が鍵
ルーティング切替時は、 「L3だけでなくL2も一緒に切り替える」 という意識がトラブルを防ぎます。
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