ネットワークセキュリティ監査のポイントと改善策【実務向け】

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ネットワークセキュリティ監査は、ネットワーク機器の設定・運用・ログ管理が適切に行われているかを確認し、潜在的なリスクを見つけ出す重要な業務です。 本記事では、現場の監査で「実際に確認される項目」と「改善策」を体系的にまとめています。 初めて監査を受ける担当者や、社内ネットワークの強化を進めたいエンジニア向けに、実務に直結する内容で解説します。

目次

■ セキュリティ監査で必ず見られるポイント一覧

監査項目は大きく以下5つのカテゴリに分けられます。

  • ① 機器アクセス制御(認証・権限)
  • ② ネットワーク構成・FWルールの妥当性
  • ③ 脆弱性・設定不備
  • ④ ログ取得・監視体制
  • ⑤ バックアップ・運用管理手順

■ ① 機器アクセス制御(認証・権限)

【確認ポイント】

  • パスワード強度(英大小・数字・記号を含む)
  • SSH 有効化/Telnet 無効化
  • アカウントの共用は禁止されているか
  • RBAC(役割ベース)で権限が適切に分離されているか
  • ログインの2要素認証(可能なら導入)
  • ログイン試行のログ収集

【改善策】

  • SSH v2 の強制・Telnet の完全廃止
  • ローカル認証 → RADIUS/LDAP への移行
  • admin 共用アカウントを廃止し、個別アカウントを必ず作成
  • 権限グループ(読み取り専用・運用・管理者)の明確化
【NG例】  
admin / admin123  
複数人で共用 → 変更履歴が追えない

【OK例】  
userA-admin  
userB-operator  
→ 個人ごとに操作履歴が残る

■ ② ネットワーク構成・FWルールの妥当性

【確認ポイント】

  • インターネット境界でFW/IPS/URLフィルタが適切か
  • 許可ルールが最小化されている(最小権限)
  • 不要な ANY ルールが存在しないか
  • DMZ/内部LANの分離が適切か
  • ステートフルFWでの戻り通信の管理

【改善策】

  • ANY → 特定サブネットまたはサービスへ制限
  • 「許可した理由」を台帳化し、不要なルールは削除
  • DMZと内部ネットワークの ACL を厳格に管理
  • ログを分析して利用されていないルールを洗い出し
【NG例】  
source any → dest any → allow  
→ 不正侵入の温床

【改善例】  
source: DMZ Web /24  
dest: DB Server /32  
port: 3306  
action: allow  
→ 具体的な要件に沿った許可のみ

■ ③ 脆弱性・設定不備の確認

【確認ポイント】

  • 機器OSのバージョンが古すぎないか
  • SNMPコミュニティの強度
  • 未使用サービス(CDP/LLDP/HTTP管理)の無効化
  • 暗号スイートの強度(TLS1.0/1.1は無効化)

【改善策】

  • 年1〜2回はOSアップデートを計画的に実施
  • SNMPv3 へ移行(パスワード+暗号化)
  • HTTPS管理コンソールの強化
  • 外部脆弱性診断ツールで定期チェック

■ ④ ログ取得・監視体制の整備

【確認ポイント】

  • Syslog・SNMP Trap の集約
  • 認証ログ・FWログの長期保管
  • 不審通信の検知ルールがあるか
  • ログ改ざん防止策(外部Syslog/SIEM)

【改善策】

  • Syslogサーバを冗長化し、最低1年以上保管
  • SIEMでログの相関分析を自動化
  • アラート発生 → エスカレーション手順を明確にする
  • インシデント管理台帳を整備
【基本構成】
Router/Switch
   └─Syslog→ Log Server
   └─SNMP Trap→ Monitoring Server

■ ⑤ バックアップ・運用管理の整備

【確認ポイント】

  • 設定バックアップの自動化
  • 差分管理(Git・RANCID・Oxidized)
  • 手順書の更新頻度
  • 設定変更の承認フロー

【改善策】

  • Configバックアップサーバの構築(RANCID など)
  • 変更履歴を Git 管理し、差分を誰でも追えるようにする
  • 運用手順を年1回は棚卸し
  • 承認ワークフローをチケットシステムで一本化
【推奨構成例】
ネットワーク機器  
  └─(SSH)→ RANCID/Oxidized  
      └→ Gitリポジトリで差分管理

■ セキュリティ監査で指摘されがちな「あるある」

  • FWルールの整理が全くされていない
  • 担当者変更により管理アカウントが放置
  • 古い機器OSのまま数年放置
  • ログは取得しているが、誰も見ていない
  • バックアップは手動で月1回のみ

特に、FWルールとアカウント管理は最も指摘されやすい領域です。

■ 監査対応をスムーズにするための事前準備

  • ネットワーク図・機器一覧の最新化
  • FWルール台帳(更新理由を含む)を作る
  • アカウント台帳を整備
  • OSバージョン一覧を更新
  • ログ保管期間を明確化

監査は「書類と現場の整合性」が最重要です。

■ まとめ

ネットワークセキュリティ監査は、単なる点検作業ではなく、 「ネットワークが攻撃に耐えられるか」を判断するための重要なプロセスです。

本記事で紹介したポイントは、実際の監査でほぼ確実に確認される内容であり、 事前に対応しておくことで、監査をスムーズに進めるだけでなく、 ネットワーク全体の強度を大幅に向上させることができます。

セキュリティレベルの底上げと監査対応準備の両面で活用ください。

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