企業ネットワークでは OSPF(内部ルーティング)と BGP(外部ルーティング)を併用するケースが一般的です。この記事では、OSPF と BGP を組み合わせた際の冗長化、負荷分散、経路制御のベストプラクティスについて解説します。
OSPF+BGP併用が必要になる理由
OSPF と BGP を併用するネットワークは次のような要件を持つことが多いです。
- 複数 ISP 回線を使用した冗長構成
- 拠点間 VPN や DC 間ネットワークでの経路制御
- 大規模ネットワークでの外部ルート管理
- OSPF と BGP の役割を分離して運用性を高めたい場合
OSPF は内部の最適ルート選択に強く、BGP は外部ルートの管理に優れています。両者を適切に組み合わせることで、効率的かつ安定したネットワークを構築できます。
OSPF と BGP の役割分担
OSPF の役割
- 社内 LAN / WAN の内部ルーティング
- 高速な収束(LSA によるリンク状態データベース)
- 帯域幅ベースのメトリック計算
BGP の役割
- 外部ネットワーク(ISP など)との経路交換
- ポリシーベースのルーティング制御
- 大規模ルーティングテーブルの管理
内部は OSPF、外部は BGP と考えると役割が明確になります。
OSPF + BGP 併用設計のベストプラクティス
1. OSPF と BGP を明確に分離する
OSPF は内部ルーティング、BGP は外部向けと役割を明確に分けておくと運用が安定します。
特に、BGP フルルートを OSPF に再配布すると CPU が高負荷になり、障害の原因になります。
2. 再配布(Redistribute)は最小限にする
OSPF と BGP の経路を相互に再配布する際には次の点を徹底します。
- 必要な経路だけ再配布(Default 経路のみが推奨)
- フィルタリングで不要な経路を遮断
- ループ防止のためタグ付けを行う
推奨パターン:BGP → OSPF へ default-route のみ再配布
3. BGP での冗長化は「EBGP マルチホーミング」が基本
ISP を 2 回線以上利用する場合は EBGP によるマルチホーミングが有効です。
典型的な構成は次の通りです。
- ISP A(Primary)
- ISP B(Backup)
- 内部ネットワークは OSPF で集約
この際、ISP ごとに Local Preference を調整することで、利用する出口回線の優先度を制御できます。
4. OSPF のエリア設計を最適化する
BGP 併用環境では OSPF の設計が重要です。
- バックボーン(Area 0)は必ず安定化させる
- 全てを Area 0 にするシンプル設計も有効
- Stub / NSSA を適切に使用して LSA を抑制
OSPF の LSA 過多により CPU 負荷が高まると、BGP の経路収束にも影響します。
5. BGP の負荷分散(ECMP)を利用する
OSPF と異なり、BGP の ECMP(Equal Cost Multi Path)は明示的に設定が必要です。
次の条件で BGP の ECMP が有効になります。
- AS Path / Local Pref などが同一
- next-hop が複数存在
マルチ ISP 回線で負荷分散を行いたい場合に非常に有効です。
6. 防御策:BGP セキュリティ設定を必ず行う
BGP は標準ではセキュリティが弱いため、次の対策が必須です。
- TTL Security(GTSM)
- Prefix フィルタリング(受信・送信)
- AS Path フィルタ
- Max-prefix 設定(誤配布によるルート氾濫対策)
ISP とのピア設定では、送受信のプレフィックスを制限しないと重大事故につながる可能性があります。
7. BGP のルートマップで経路を制御する
外部への出力経路、内部へのデフォルト配布などは route-map で制御します。
- Primary 回線へは Local Preference を高く設定
- Backup 回線へは AS Path Prepend
- 意図しない経路が広まらないようにフィルタ
「出口の優先度」= Local Preference 「外部への広告コントロール」= AS Path Prepend
OSPF+BGP 併用構成の例
典型構成:内部 OSPF、外部 BGP(Primary / Backup)
[LAN] -- OSPF -- [Core Router] -- EBGP -- ISP A
└-- EBGP -- ISP B
この構成で実施する設定のポイントは次の通りです。
- Internal は OSPF で安定した経路提供
- BGP から OSPF へは default-route のみ再配布
- Primary は Local Preference 高め、Backup は低めに設定
- ECMP で分散も可能(条件付き)
トラブルシューティングのポイント
1. BGP 受信経路の確認
show bgp summary show bgp ipv4 unicast
2. OSPF のネイバー状態確認
show ip ospf neighbor show ip ospf database
3. 再配布経路のループチェック
タグ付けしていないと OSPF ↔ BGP の経路ループが発生する可能性があります。
まとめ
OSPF と BGP を併用する際には、再配布を最小に抑え、ISP との接続はポリシーベースで制御することが重要です。冗長化、負荷分散、経路制御を適切に設計することで、安定性と柔軟性を兼ね備えたネットワークを構築できます。



