IPアドレスが重複すると、ネットワーク全体や特定端末に深刻な影響を与えます。本記事では、現場での典型症状・確認ポイント・ログの見方・解決手順を、初心者〜実務者向けに体系的にまとめています。
目次
1. IPアドレス重複が起きた時の主な症状
- ネットワーク接続が不安定
┗ 断続的に通信が途切れる、応答が遅くなる - デフォルトゲートウェイへ ping が不安定
┗ 連続 ping でtimeout / 応答あり / timeoutのように揺れる - OS の警告ポップアップ
┗ Windows:IP アドレスの競合メッセージ ┗ macOS:別のデバイスが同じ IP を使用中 - ARP テーブルが高速に変動
┗ 同じ IP に対して MAC が頻繁に書き換わる
2. すぐに行うべき初動確認
(1)ゲートウェイへの ping を実施
ping <ゲートウェイIP>
症状の例:
Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time=1ms
Request timed out.
Reply from 192.168.1.1: bytes=32 time=2ms
Request timed out.
→ このような揺れは重複の典型です。
(2)ARP テーブルを確認
arp -a
異常例:
192.168.1.50 00-11-22-33-44-55 dynamic
192.168.1.50 aa-bb-cc-dd-ee-ff dynamic ← 瞬間的に切り替わる
→ 同じ IP に対して MAC アドレスが入れ替わるのは重複の証拠。
(3)スイッチ側 MAC アドレステーブルを確認
show mac address-table | include 192.168.1.50
結果の例:
VLAN 10 00:11:22:33:44:55 Gi1/0/5
VLAN 10 aa:bb:cc:dd:ee:ff Gi1/0/12
→ 同じ IP が複数ポートから学習されている可能性大。
3. 原因を特定するためのチェックリスト
(1)静的 IP の重複
業務端末・プリンタ・IoT・監視カメラなどで多いパターン。
・管理されていない機器が勝手に固定IPを設定
・担当者が変わりIP管理表が古い
・設定ミスで同一IPを他の機器に割り当ててしまった
(2)DHCP と静的 IP が混在
DHCP 範囲と固定 IP が重複しているケース。
例)DHCPが192.168.1.10〜200 まで
→ プリンタに 192.168.1.50 を手動設定してしまう
DHCP サーバで範囲を確認します。
show ip dhcp pool
show ip dhcp binding
(3)仮想化環境(VM)のクローン作成ミス
VM をコピーした際に IP を変えず配布してしまうパターン。
VMware / Hyper-V の管理者でよく起こります。
(4)VPN や別セグメントからの誤配布
VPN 接続端末のローカル IP と社内 IP が同じでコンフリクト。
→ VPN クライアント設定で NAT / IP 再割り当ての設定を確認。
4. 重複発生機器を特定する方法(実務で最も有効)
① ARP の変動から MAC を取得
arp -a
→ 2 つの MAC アドレスをメモ
② スイッチで MAC の接続ポートを確認
show mac address-table address <MACアドレス>
例:
show mac address-table address 00:11:22:33:44:55
→ Gi1/0/5 に接続
→ ケーブルを辿る、またはポートの CDP/LLDP で端末を特定。
③ CDP/LLDP で接続デバイス名を確認
show cdp neighbors detail
show lldp neighbors detail
→ メーカー名/ホスト名から対象機器を確定。
5. 解決手順(実務のフロー)
- MAC アドレスから重複端末 A・B を特定
- 両端末の IP 設定を確認(静的 or DHCP)
- 片方を正しい IP に再設定する
- ARP キャッシュをクリアする(必要に応じて)
arp -d * clear arp - ping と ARP の安定性を確認
6. 対策:今後 IP 重複を起こさないために
✔ DHCP 管理の徹底
- DHCP 範囲を整理(固定 IP の帯域は除外)
- DHCP バインディングの監視
✔ IP 管理表の更新・バージョン管理
Excel では破綻しやすいため、以下ツールがベスト:
- NetBox
- phpIPAM
✔ VLAN で機器種別ごとに IP 帯を分割
「ユーザ端末=VLAN10」「プリンタ=VLAN20」など、 帯域が分かれるだけで重複は大幅に減ります。
まとめ
IP 重複はネットワーク障害の中でも発生頻度が高く、原因特定はシンプルですが、ARP 変動がヒントになる典型的なトラブルです。
この記事の流れどおり調査すれば、確実に重複元を特定し、安全に復旧できる可能性が高まります。
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