ネットワーク更改で最も事故が多い工程は「IP再設計」です。
- サブネット変更後に一部だけ通信不可
- FWで予期せぬブロック発生
- 監視は正常なのに業務停止
- クラウド連携だけ切断
原因の多くは「設計ミス」ではなく、 影響範囲の洗い出し不足です。
本記事では、実務で使える IP再設計前に必ず行うべき影響範囲調査手法を 体系的に解説します。
目次
なぜIP再設計は失敗するのか?
典型的な失敗パターン
- ルーティングだけ見て安心する
- FWポリシーを網羅確認していない
- アプリ依存関係を調査していない
- クラウド側設定を忘れる
- 監視やバックアップ経路を考慮していない
IP変更はL3設計全体の再定義です。 単なるアドレス変更ではありません。
影響範囲洗い出しの基本フレームワーク
以下の7カテゴリで洗い出します。
① ルーティング
- 静的ルート
- OSPF/BGP広告範囲
- 要約ルート
- 再配布設定
- PBR
確認コマンド例:
show ip route
show ip ospf database
show ip bgp
show run | include route
② ファイアウォール
- アドレスオブジェクト
- ポリシーACL
- NAT設定
- IPベース制限
確認例:
show access-list
show nat
show security policies
特にNAT変換元アドレスの見落としは事故率が高い。
③ DNS
- 正引きAレコード
- 逆引きPTR
- TTL設定
- ハードコードIP有無
確認:
nslookup ホスト名
nslookup IPアドレス
④ クラウド環境
- Security Group
- NACL
- VPCルートテーブル
- VPN対向定義
オンプレ変更時に最も忘れられる領域。
⑤ 監視・運用系
- 死活監視対象IP
- SNMPポーリング
- Syslog送信元制限
- バックアップ対象IP
IP変更後に「監視だけ止まる」ケースが多発。
⑥ 認証・セキュリティ
- RADIUS制限
- LDAPアクセス制御
- IP制限付きWeb管理画面
- IPホワイトリスト制御
⑦ アプリ依存関係
最も重要かつ見落とされやすい領域。
- DB接続先IP固定指定
- バッチ処理内ハードコード
- レガシー機器設定
- ライセンス認証IP制限
アプリ担当へのヒアリングは必須。
実務で使える影響範囲洗い出し手順
STEP1:現状通信フロー可視化
netstat -an
ss -an
tcpdump -i eth0
実通信から依存関係を抽出します。
STEP2:IP依存設定の全文検索
show run | include 192.168.
grep -R "192.168." /etc/
機器・サーバ全体で検索します。
STEP3:通信マトリクス作成
| 送信元 | 宛先 | ポート | FW通過 | NAT有無 |
|---|---|---|---|---|
| AP | DB | 3306 | Yes | No |
この表を作らずに移行するのは危険です。
よくある設計ミス事例
■ 要約ルートに吸い込まれる
→ ブラックホール発生
■ 片方向通信化
→ 戻り経路未修正
■ FWの旧オブジェクト残存
→ 意図しない許可
■ DHCP旧マスク配布
→ 一部端末のみ通信不可
移行前チェックリスト(保存推奨)
- ルーティング再計算確認
- 要約ルート影響確認
- FW/NAT全ポリシー確認
- DNS TTL短縮済み
- 監視IP更新済み
- クラウド側修正済み
- アプリ担当承認済み
- ロールバック手順確立済み
安全な移行のベストプラクティス
- 新セグメント事前構築
- 並行稼働期間確保
- DNS切替
- トラフィック確認
- 旧セグメント停止
- ログ監視強化
一括切替は避ける。 段階的移行が事故を減らします。
まとめ
IP再設計の失敗原因は 設計力不足ではなく、影響範囲調査不足です。
以下の7領域を必ず確認してください:
- ルーティング
- FW/NAT
- DNS
- クラウド
- 監視
- 認証
- アプリ依存関係
IP変更はL3設計の再構築です。 事前洗い出しを徹底すれば、 更改事故は確実に防げます。
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