内部不正を防ぐネットワーク設計の考え方

  • URLをコピーしました!

企業ネットワークのセキュリティ事故は、外部攻撃だけでなく 内部不正・内部端末の悪用によって発生するケースが少なくありません。

本記事では、内部犯行・内部侵入を前提としたネットワーク設計という視点から、 実務で有効な設計・設定・運用の考え方を解説します。

目次

内部不正対策に必要な基本思想

  • 「社内=安全」という前提を捨てる
  • 侵入は必ず起きるものとして設計する
  • 被害を局所化・可視化・即遮断できる構成にする

この思想がないまま対策を積み重ねても、効果は限定的です。

① ネットワーク分離による権限最小化

設計ポイント

  • 業務端末、管理端末、サーバ、IoT を明確に分離
  • VLAN分割+L3/FWで通信制御

よくある失敗例

  • 同一部署=同一VLAN
  • 管理用サーバへ誰でも到達可能

設計の結果

不正操作が発生しても横断的な拡散を防止できます。

② 管理系ネットワークの完全分離

対象

  • NW機器管理
  • 仮想基盤・ストレージ
  • 監視・バックアップサーバ

実務設計

  • 管理専用VLAN
  • 管理端末のみアクセス許可

効果

管理権限の不正使用リスクを大幅に低減します。

③ 通信制御は「許可リスト方式」が原則

設計指針

  • 原則 deny all
  • 業務要件で必要な通信のみ明示許可

NG設計

  • any-any 許可
  • 理由不明な「とりあえず通す」ルール

内部不正は、広すぎる通信許可を必ず悪用します。

④ L2レベルでの不正抑止(内部攻撃対策)

有効な技術

  • DHCP Snooping
  • Dynamic ARP Inspection
  • Port Security

実務効果

なりすまし・盗聴・踏み台化を初期段階で阻止できます。

⑤ ユーザー・端末単位での可視化

設計ポイント

  • IP・MAC・ユーザーの紐付け
  • ログで「誰が・どこで・何をしたか」を追跡可能に

結果

不正行為が匿名化されなくなり抑止力が向上します。

⑥ ログ・監視を前提にしたネットワーク設計

対象ログ

  • FW通信ログ
  • 認証ログ
  • 管理操作ログ

設計の考え方

「事故後に調べられる」ではなく、 異常を早期に検知できる構成が重要です。

⑦ VPN・リモートアクセスのアクセス範囲制限

危険な設計

  • VPN接続=社内フルアクセス

安全な設計

  • 業務に必要なサーバのみ許可
  • MFA+端末制御

内部犯行は正規アカウントから行われることが多いです。

⑧ 権限分離と操作ログの取得

設計指針

  • 管理者権限の共有禁止
  • 操作ログの取得・保存

効果

不正行為の抑止と事後追跡が可能になります。

⑨ 障害・インシデント対応を想定した設計

考慮点

  • 遮断すべき通信の判断基準
  • 影響範囲を最小化する構成

設計段階で遮断ポイントを決めておくことが重要です。

⑩ 運用ルールと技術対策をセットで考える

ポイント

  • 技術だけでは内部不正は防げない
  • ルール・教育・監査と組み合わせる

まとめ

  • 内部不正は「想定外」ではなく「前提条件」
  • ネットワーク設計で被害範囲を限定できる
  • 分離・最小権限・可視化が三本柱

内部不正対策は、後付けより設計段階が最重要です。
本記事の考え方を取り入れることで、実務に耐える安全なネットワークを構築できます。

目次