HSRPやVRRPで冗長化したのに、
- 回線が落ちているのに切り替わらない
- インターネットだけ通信できない
- 片系にトラフィックが偏る
- 障害時に全断する
このようなトラブルが発生していませんか?
原因の多くは「トラッキング設定不足」です。
HSRP/VRRPはデフォルトでは“インターフェースのリンク状態しか見ていない”ため、 実際の到達性までは保証していません。
本記事では、トラッキング設定の本質・よくある設計ミス・具体的な確認方法・正しい設計例まで徹底解説します。
目次
1. なぜトラッキングが必要なのか
基本動作の落とし穴
HSRP/VRRPは通常、
- 物理リンクDown → 優先度低下 → 切替
という動作をします。
しかし実際の障害は:
- 上位ルータが停止
- ISP回線断
- FW停止
- ルーティング不整合
リンクはUpのままです。
つまり、切り替わらずブラックホールが発生します。
2. よくある事故パターン
① ISP断なのに切り替わらない
- WANインターフェースはUp
- 上位GW到達不可
結果:全ユーザ通信停止
② FW停止でもHSRPは切り替わらない
- コアSWは正常
- FWへの経路断
結果:
- インターネット通信不能
- 内部通信は正常
③ スタティックルートのみ監視していない
デフォルトルートが無効になっても、 HSRPは反応しません。
3. 必ず確認すべきトラッキング項目
① 上位ゲートウェイ到達性
最重要項目です。
確認ポイント
- IP SLA設定済みか
- trackオブジェクト紐付け済みか
- 優先度減算値は適切か
正しい例(Cisco系)
ip sla 1
icmp-echo 8.8.8.8 source-interface Gig1/0
frequency 5
ip sla schedule 1 life forever start-time now
track 1 ip sla 1 reachability
interface Vlan10
standby 1 track 1 decrement 50
到達不能になった瞬間に優先度が下がり、確実に切替。
② デフォルトルート存在確認
ルートが消えてもリンクはUpのまま。
確認
- track ip route 0.0.0.0/0
③ FWへの到達性
FW経由が必須なら、FWのIPを監視。
原則:出口装置を直接監視する。
④ 物理リンクだけに依存しない
単なる:
standby 1 track Gig1/0
では不十分です。
4. トラッキング設計の判断基準
| 監視対象 | 必要性 |
|---|---|
| 上位GW | 必須 |
| FW | 出口制御時必須 |
| ISP DNS | 回線監視用 |
| 物理リンクのみ | 不十分 |
5. 優先度設計の落とし穴
減算値が小さすぎる
例:
- Primary priority 110
- Secondary priority 100
- decrement 5
→ 110 – 5 = 105 → 切り替わらない
原則
確実に逆転する値を設定する。
6. フェイルバック設計も重要
preempt有効時:
- 回復後すぐ切替
- セッション断発生
対策
- preempt delay設定
- 十分な収束時間確保
7. 実践テスト手順(必須)
設計だけで安心してはいけません。
テスト① 上位GW遮断
- 切替までの時間測定
- 通信断時間確認
テスト② ISP断シミュレーション
- 実回線停止試験
テスト③ FW停止試験
実機テストなしの冗長は、冗長ではありません。
8. まとめ
HSRP/VRRP設計で最も重要なのは:
「リンクではなく到達性を監視すること」
- IP SLAで外部監視
- trackで優先度制御
- 十分な減算値設定
- preempt delay考慮
- 必ず切替試験実施
これを満たせば、
- 回線断でも即切替
- ブラックホール防止
- 安定冗長構成実現
今一度、現在の設定を確認してください。 トラッキングが甘いと、障害時に必ず後悔します。
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