FWログとパケットキャプチャを突き合わせて原因特定する方法

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「FWログでは許可されているのに通信できない」
「パケットは流れているが、アプリが動かない」

このようなトラブルでは、FWログ単体パケットキャプチャ単体を見ても原因に辿り着けません。

本記事では、FWログとパケットキャプチャを突き合わせて 通信障害の原因を論理的に特定するための、実務向け手順を解説します。

目次

なぜ「突き合わせ」が必要なのか

  • FWログ:ポリシー判断の結果
  • パケット:実際に流れた事実

FWは「通したつもり」でも、通信は成立していないケースが多く存在します。

全体像:原因特定の基本フロー

  1. 通信仕様(IP / Port / Protocol)を整理
  2. FWログで許可・遮断を確認
  3. パケットでSYN/ACKや再送を確認
  4. 差分から原因を特定

STEP① まず通信仕様を明確にする

整理すべき項目

  • 送信元IP / 送信先IP
  • 送信元ポート / 宛先ポート
  • TCP or UDP

ここが曖昧だと、ログもパケットも正しく見られません

STEP② FWログで確認するポイント

最低限確認する項目

  • 許可 or 拒否
  • 適用ポリシー名
  • セッションID
  • NAT有無

FWログ例(概念)


ALLOW TCP src=10.1.1.10 dst=10.2.2.20 sport=52344 dport=443
policy=WEB-ALLOW

この時点では「FWは通した」ことしか分かりません。

STEP③ パケットキャプチャで確認するポイント

最低限見るべきTCP挙動

  • SYNが送信されているか
  • SYN-ACKが返ってきているか
  • ACKで確立しているか

tcpdump例


tcpdump -i eth0 host 10.2.2.20 and tcp port 443

ケース① FWログは許可、SYN-ACKが返らない

観測結果

  • FWログ:ALLOW
  • パケット:SYNのみ

原因候補

  • サーバ側FW・OS FWで遮断
  • サーバ未起動/ポート未Listen

判断ポイント

FWより先で止まっていることが分かります。

ケース② SYN-ACKは返るがACKが返らない

観測結果


SYN → SYN-ACK → (ACKなし)

FWログの特徴

  • 片方向のみセッション成立

原因

  • 戻り通信の経路不一致
  • 非対称ルーティング
  • NAT設定不整合

ケース③ パケットは正常だがFWがセッションを切断

観測結果

  • RST送信
  • 短時間でセッション消失

FWログ例


SESSION TIMEOUT

原因

  • FWセッションタイムアウトが短すぎる
  • 長時間通信アプリとの相性問題

ケース④ NAT環境でIPが一致しない

よくある誤解

  • FWログのIPとパケットのIPが違う

理由

FWログはNAT後、パケットはNAT前を見ていることがあります。

対処

  • NAT変換前後のIP対応表を確認

突き合わせ時の実務チェックリスト

  • FWログの時刻とパケット時刻は一致しているか
  • 同一通信を見ているか(ポート番号)
  • NAT有無を考慮しているか
  • 往復通信を確認しているか

やってはいけないNG対応

  • FWルールを闇雲に広げる
  • any-anyで一時回避
  • パケットを見ずに「FWのせい」と決めつける

これらは再発・事故の温床になります。

まとめ

  • FWログは「判断結果」、パケットは「事実」
  • 片方だけでは原因特定できない
  • 突き合わせることで論理的に切り分け可能

FWログ × パケットキャプチャを使いこなせるようになると、 ネットワーク障害対応の精度が一段上がります

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