企業ネットワークでは、AWS や Azure をオンプレミス環境と安全に接続し、ハイブリッド構成を構築するケースが一般的になっています。本記事では、AWS と Azure の接続方式(VPN / Direct Connect / ExpressRoute)の違い、設計ポイント、冗長化構成までを実務レベルで解説します。
目次
クラウドとオンプレ接続の基本アーキテクチャ
クラウドとオンプレを接続する方式は大きく 2 種類に分類されます。
- VPN接続(IPsec) … 低コスト・導入が簡単・インターネット経由
- 専用線接続(Direct Connect / ExpressRoute) … 高信頼・高帯域・低遅延
用途や予算に応じて選択する必要があります。
AWS とオンプレ接続の構成パターン
1. AWS Site-to-Site VPN(最も手軽な構成)
オンプレ側のルータまたはファイアウォールと、AWS のVirtual Private Gateway(VGW)を IPsec で接続する方式です。
- インターネット経由のため低コスト
- 基本帯域は 1Gbps 未満(実効は 200〜400Mbps 程度)
- BGP による経路交換が可能
ベストプラクティス
- VPN トンネルは 2本(AWS が自動で2つ用意)
- オンプレ側も冗長ルータを用いて二重化が望ましい
- 重要トラフィックは専用線と組み合わせる(後述)
2. AWS Direct Connect(高品質な専用線)
オンプレから AWS との間に閉域網を構築できます。
- 低遅延・高帯域(1Gbps〜100Gbps)
- 通信がインターネットを経由しない
- ハイブリッド構成で最も安定
Direct Connect Gateway を利用することで複数リージョンの VPC にアクセス可能です。
ベストプラクティス
- Direct Connect の冗長回線(デュアル接続)を必須化
- VPN と併用することで災害時フェイルオーバも可能
- BGP のメトリック調整で優先経路を制御
Azure とオンプレ接続の構成パターン
1. Azure VPN Gateway(手軽で柔軟)
Azure 側の VPN Gateway とオンプレを IPsec で接続する構成です。
- Site-to-Site IPsec 接続
- BGP によるルート交換に対応
- SKU によりスループットが大きく異なる
ベストプラクティス
- Gateway SKU は最初から上位を選定(VpnGw2/3以上)
- Active-Active 構成を採用して冗長化
- NVA(仮想FW)と組み合わせる場合は経路設計を明確にする
2. ExpressRoute(閉域網の高品質接続)
Azure とオンプレをキャリア網で接続します。
- インターネット非経由
- SLAが高く重要システム向け
- 帯域保証(50Mbps〜10Gbps)
ベストプラクティス
- ペア回線構成(Primary/Secondary)を必須採用
- VPN Gateway の IPsec をバックアップ経路に追加
- 経路フィルタリングと BGP コミュニティによる制御
AWS と Azure の接続比較
| 項目 | AWS | Azure |
|---|---|---|
| 簡易VPN | Site-to-Site VPN | VPN Gateway |
| 専用線 | Direct Connect | ExpressRoute |
| 冗長化 | DCは2本必須・VPN併用推奨 | ERはPrimary/Secondary必須 |
| クロスリージョン接続 | DX Gatewayで対応 | ER Global Reach で対応 |
よくある実装例
実例1:まずは VPN で開始し、後から専用線に移行
オンプレ ー IPsec VPN ー AWS/Azure
オンプレ ー Direct Connect / ExpressRoute(追加)
段階的導入ができ、最も現実的な構成です。
実例2:拠点数が多い場合の Hub & Spoke 構成
クラウドを中心ハブとし、オンプレ複数拠点を接続する方式です。
- Azure Hub & Spoke
- AWS Transit Gateway
ルーティングやセキュリティの一元管理が可能です。
実例3:アクティブ/スタンバイ冗長構成
- 優先:Direct Connect / ExpressRoute
- バックアップ:IPsec VPN
クラウド連携で最も一般的な冗長構成です。
設計時に考慮すべきポイント
1. 経路制御の明確化(BGP設計)
- 優先経路とバックアップ経路のメトリック調整
- オンプレ側の経路集約
- ループ防止(AS Path / Local Preference)
2. セキュリティ設計
- NVA / FW の導入(FortiGate, PaloAlto, Cisco etc.)
- インバウンド/アウトバウンドの最小化
- ログの中央管理(SIEM連携)
3. IPアドレス設計
- オンプレとクラウドのアドレス重複を禁止
- RFC1918の推奨範囲を明確に設計
- 将来の拡張(VPC/VNet追加)を考慮した体系化
4. 帯域・遅延の要件確認
オンプレアプリの要件によっては VPN では不足することがあります。
- 大量ファイル転送 → 専用線
- VDI / リアルタイム通信 → 専用線推奨
まとめ
AWS・Azure とオンプレ接続は、VPN・Direct Connect・ExpressRoute の組み合わせで柔軟なハイブリッド構成が実現できます。特に、専用線とVPNを併用した「二重化構成」は、実務でも最も安定した方式です。
本記事を参考に、自社の要件(帯域・コスト・信頼性)に合わせて最適な接続方式を選定していただければと思います。
