ARPテーブルの不一致は、ネットワーク通信が急に遅くなったり、特定ホストだけ通信できなくなる時によく発生します。本記事では、ARPの基本から、不一致の検知方法・ログの読み方・原因別の対処方法まで完全ガイドします。
目次
■ ARPテーブル不一致とは?
ARPテーブルは「IPアドレス ⇔ MACアドレス」の対応表です。これが不一致になると、誤った宛先にパケットを送るため通信障害が発生します。
- 通信できたりできなかったりする
- ARPテーブルが頻繁に書き変わる
- 特定のサーバだけ疎通不可になる
- グラグラしたログ(MACフラッピング)が見られる
主な原因は以下の通りです。
- IP重複
- L2ループ(STP不整合など)
- ARPスプーフィング
- 冗長構成の切替不備(VRRP/HSRP/GLBP)
- 機器キャッシュの不一致
■ 症状例
- ping が返る時と返らない時がある
- ARPテーブルが高速に書き変わる
- MACアドレステーブルの移動(flapping)が多発
- ARP request の異常増加
■ ARP不一致を疑うべき状況
- 特定のセグメントだけ通信トラブルが起きている
- VLANを跨いだ通信だけ不安定
- フェイルオーバー後に通信が不安定
- DHCPでは正常だが固定IPで問題が発生
■ 検知方法(コマンド+結果例付き)
① ARPテーブルの確認
show arp | include 192.168.1.
例:本来あり得ない MAC が書き込まれている
Internet 192.168.1.10 0 aaaa.bbbb.cccc ARPA Vlan10
Internet 192.168.1.10 0 dddd.eeee.ffff ARPA Vlan10
→ 同じ IP に異なる MAC が複数見える場合は明確な異常。
② MACアドレステーブルの確認
show mac address-table dynamic | include aaaa.bbbb.cccc
例:ポートが高速に変動している(MACフラッピング)
*Mar 1 00:12:33: MAC address flapping detected on port Gi1/0/3
→ L2ループ or 異常なARPスプーフィングの疑い。
③ ARPパケットのキャプチャ
monitor capture CAP interface Gi1/0/1 both
monitor capture CAP match arp
monitor capture CAP start
異常例:ARP Reply が大量・高速に返ってくる
ARP Reply from 192.168.1.10 (dddd.eeee.ffff)
ARP Reply from 192.168.1.10 (aaaa.bbbb.cccc)
→ 複数のデバイスが同じ IP を名乗っている可能性。
④ VRRP/HSRP の MACの確認
show standby brief
切り替えが失敗すると、仮想MACが正しく反映されないことがあります。
⑤ PC側の ARPキャッシュ確認
arp -a
異常例:
192.168.1.1 dddd.eeee.ffff dynamic
本来ルータの MAC でない場合 → キャッシュ汚染。
■ 原因と対処法(実務向け)
① IPアドレス重複
確認手順
show arp | include 192.168.1.10
対処
- 該当IPを使っている端末をネットワークから外す
- DHCPスコープの見直し
- 固定IPの管理台帳を更新
② L2ループ
確認手順
show spanning-tree summary
対処
- STP設定の見直し(root bridge の明示指定)
- BPDU Guard/Loop Guardの導入
③ ARPスプーフィング(セキュリティ攻撃)
対処
- Dynamic ARP Inspection の有効化(DAI)
- DHCP Snooping と組み合わせて保護
ip dhcp snooping
ip arp inspection vlan 10
④ 冗長構成(VRRP/HSRP)の切り替え失敗
症状
- active/standby の不整合
- 仮想MACが切り替わらず、ARPが古い状態
対処
- フェイルオーバーの強制テスト
- keepalive の確認
- バージョン不一致の修正
⑤ 機器・PC側 ARPキャッシュの古い情報
対処
clear arp-cache
PC側:
arp -d *
■ 再発防止策(実務で必須)
- DHCP Snooping / DAI の有効化
- STP構成の明確化(root bridge を固定)
- 冗長ルータの仮想MACと動作確認
- 固定IP利用端末の台帳更新
- スイッチのログ監視(MAC flapping)
■ まとめ
ARPテーブル不一致は、IP重複・L2ループ・ARPスプーフィング・冗長構成不整合など、様々な原因で発生します。早期に正確に特定するには、以下3点が重要です。
- ARPテーブル・MACテーブルの変動を観察する
- ARPパケットのキャプチャで複数のMACを確認
- 冗長構成(VRRP/HSRP)のMACと一致しているか確認
本記事の手順をそのまま実施すれば、ARP不一致の原因特定と改善が可能です。
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