端末のIPアドレスが 169.254.x.x になって通信できない―― これは現場で非常によく遭遇する DHCP障害の代表的症状です。
本記事では、
- APIPAとは何か
- なぜ169.254.x.xが割り当てられるのか
- どこを見れば原因を特定できるのか
- 即復旧するための実務的手順
をDHCPの通信フローと実例を交えて徹底解説します。
目次
APIPA(169.254.x.x)とは?
APIPA(Automatic Private IP Addressing)とは、
- DHCPサーバからIPアドレスを取得できなかった場合
- OSが自動的に割り当てる自己診断用IPアドレス
です。
使用される範囲は次の通りです。
169.254.0.0/16
APIPAが出ている時点で、正常なネットワーク通信は不可能と判断して問題ありません。
なぜAPIPAが割り当てられるのか(仕組み)
DHCPの正常な流れ
DHCP Discover
↓
DHCP Offer
↓
DHCP Request
↓
DHCP ACK
APIPAが割り当てられるのは、
- Discoverに対するOfferが返ってこない
- 途中で通信が途切れている
状態です。
APIPAが出る代表的な原因一覧
| 分類 | 原因 |
|---|---|
| DHCPサーバ | サービス停止 / スコープ枯渇 |
| ネットワーク | VLAN設定ミス / DHCPリレー不備 |
| FW / セキュリティ | UDP/67,68 ブロック |
| 端末 | NIC無効 / ドライバ異常 |
① DHCPサーバ側の確認ポイント
確認手順
- DHCPサービスは起動しているか
- スコープに空きがあるか
- 対象VLAN向けスコープが存在するか
Windows DHCPサーバ例
- イベントログにエラーが出ていないか
- アドレスプール枯渇警告
② VLAN・DHCPリレー設定の確認
典型的な設定不備
- L3IFに
ip helper-address未設定 - 誤ったDHCPサーバIPを指定
確認コマンド例(Cisco)
show running-config interface vlan 10
show ip interface vlan 10
正しい設定例
interface Vlan10
ip address 192.168.10.1 255.255.255.0
ip helper-address 192.168.100.10
③ スイッチ・FWでの遮断確認
よくある遮断ポイント
- DHCP Snooping の誤設定
- FWで UDP/67,68 が遮断
確認コマンド例
show ip dhcp snooping
show access-lists
④ 端末側の確認ポイント
Windows確認例
ipconfig /all
見るべきポイント
- DHCP有効か
- 169.254.x.x が割り当てられているか
- メディア状態が「接続済み」か
一時対処(再取得)
ipconfig /release
ipconfig /renew
即切り分けできる実務フロー
- APIPAかどうか確認
- 同一VLANで他端末も同症状か
- DHCPサーバ稼働確認
- DHCPリレー設定確認
- FW / Snooping確認
再発防止のための設計ポイント
- DHCPサーバ冗長化
- スコープ利用率監視
- DHCP Snoopingの正しい設計
- 障害時の固定IP手順整備
まとめ
- APIPAは「DHCPが機能していない」明確なサイン
- 原因はサーバ・NW・FW・端末のいずれか
- DHCP通信フローを理解すれば即切り分け可能
169.254.x.x を見た瞬間に 「どこを疑うべきか」が浮かぶようになれば、 DHCP障害対応は一気に楽になります。
