VTP(VLAN Trunking Protocol)は、Cisco独自のプロトコルで、スイッチ間でVLAN情報を自動的に同期・管理するための仕組みです。
VLANの作成や削除を一台のスイッチで行うと、同じVTPドメイン内の他のスイッチにもその情報が自動反映されるため、ネットワーク管理の効率化が可能になります。
目次
VTPとは?基本概要
通常、スイッチごとにVLANを個別設定する必要がありますが、VTPを利用すると、VLAN情報(VLAN IDや名前など)を中央管理できます。
これにより、複数スイッチ間の設定整合性を維持しやすくなります。
項目 | 説明 |
---|---|
プロトコル名 | VTP(VLAN Trunking Protocol) |
対象機器 | Ciscoスイッチ |
目的 | VLAN情報をスイッチ間で自動的に同期する |
通信経路 | トランクポート(802.1Q または ISL) |
VTPの動作モード
VTPには3つのモードがあります。それぞれの特徴を以下にまとめます。
モード | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
Server | VLAN情報を作成・削除し、他スイッチに配布 | VLANデータベースを保持。VTPドメイン全体の管理を行う。 |
Client | ServerからVLAN情報を受け取り適用 | 自身ではVLAN作成不可。Serverからの更新を自動反映。 |
Transparent | VTP情報を転送のみ行う | 他スイッチへVTP情報を中継するが、自身の設定には反映しない。 |
VTPの仕組みとバージョン
VTPはVLAN情報を「VTPアドバタイズメント」としてトランクポート経由で送信します。
VTPにはバージョンがあり、対応機器や環境に応じて選択が必要です。
バージョン | 特徴 |
---|---|
VTPv1 | 基本的なVLAN同期をサポート。 |
VTPv2 | Token Ring VLANなどをサポート。より安定した同期。 |
VTPv3 | 拡張VLAN(VLAN1006〜4094)をサポートし、認証や権限管理が強化。 |
VTPの設定例(Ciscoスイッチ)
以下はVTPを設定する際の基本的な手順です。
# VTPドメインの設定
Switch(config)# vtp domain example.local
# VTPモードをServerに設定
Switch(config)# vtp mode server
# VTPバージョンを指定
Switch(config)# vtp version 2
# VTPパスワード設定(任意)
Switch(config)# vtp password myvtpkey
# VLANを作成(Serverモードで実施)
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name SALES
Switch(config-vlan)# exit
# 設定確認
Switch# show vtp status
上記設定により、「example.local」ドメイン内のClientモードスイッチに自動的にVLAN情報が配布されます。
VTPに関するトラブルと原因
症状 | 原因 | 対処方法 |
---|---|---|
VLAN情報が同期されない | VTPドメイン名が一致していない | 全スイッチで同一ドメイン名を設定 |
VLANが削除・消失した | 誤って空のServerスイッチが上書き配信 | revision番号を確認し、古い情報が反映されないよう管理 |
VTP動作しない | トランクポート未設定またはVTPバージョン不一致 | トランク設定とVTPバージョンを確認・統一 |
認証エラーが出る | VTPパスワードが異なる | 全スイッチで同一パスワードを設定 |
原因と解決方法の対応表
原因 | 対応する解決方法 |
---|---|
VTPドメイン名の不一致 | vtp domain [ドメイン名] を全スイッチで統一 |
誤ったServerスイッチによる上書き | revision番号確認:show vtp status |
トランク未設定/バージョン不一致 | トランク設定確認:show interfaces trunk |
VTPパスワード不一致 | vtp password [パスワード] を統一 |
まとめ
- VTPはVLAN設定をスイッチ間で自動同期する仕組み。
- Server/Client/Transparentの3モードを理解して使い分ける。
- VTPドメイン名・バージョン・パスワードを全機器で統一することが重要。
- 誤ったServerが情報を上書きすると重大な障害を引き起こすため、管理には注意。
VTPを正しく活用すれば、ネットワークのVLAN管理が効率化されますが、構成変更時には慎重な設計・テストが不可欠です。