VLSM(可変長サブネットマスク)を使った設計と演習問題

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ネットワーク設計では、限られた IP アドレス空間を効率的に分割することが重要です。 このとき活用される技術が VLSM(Variable Length Subnet Mask:可変長サブネットマスク) です。 本記事では、VLSM の概要、設計手順、具体例、そして練習問題を交えて解説します。

目次

1. VLSM(可変長サブネットマスク)とは?

VLSM とは、ネットワークを分割(サブネット化)する際に、異なるサブネットマスク長を使用できる技術のことです。 従来の固定長サブネット(FLSM:Fixed Length Subnet Mask)では、全てのサブネットが同じサイズでしたが、 VLSM を使うことで、必要なホスト数に応じて柔軟にネットワークを分割できます。

例:

  • ネットワークアドレス:192.168.10.0/24
  • 用途ごとのホスト数:
    • 部署A:50台
    • 部署B:25台
    • 部署C:10台

この場合、部署ごとに異なるサブネットマスクを割り当てることで、無駄のないアドレス設計が可能になります。

2. FLSM と VLSM の違い

項目FLSMVLSM
マスク長全サブネットで共通サブネットごとに異なる
アドレス効率低い(無駄が出やすい)高い(最適化可能)
設計の柔軟性固定的柔軟
計算の難易度簡単やや複雑

3. VLSM の設計手順

  1. ネットワーク全体のアドレス空間を確認(例:192.168.10.0/24)
  2. 必要なホスト数をサブネットごとにリスト化
  3. ホスト数の多い順に並べ替える
  4. 各サブネットに必要なホスト数から適切なサブネットマスクを算出
  5. 上位ネットワークから順に割り当てていく

4. 設計例

要件

  • 利用可能アドレス:192.168.10.0/24(256アドレス)
  • 必要なホスト数:
    • 部署A:50台
    • 部署B:25台
    • 部署C:10台

手順

  1. 部署A(50台) → 2⁶ = 64台必要 → /26(64アドレス) → 192.168.10.0/26(192.168.10.0〜192.168.10.63)
  2. 部署B(25台) → 2⁵ = 32台必要 → /27(32アドレス) → 192.168.10.64/27(192.168.10.64〜192.168.10.95)
  3. 部署C(10台) → 2⁴ = 16台必要 → /28(16アドレス) → 192.168.10.96/28(192.168.10.96〜192.168.10.111)

結果

部署必要ホスト数割り当てサブネット使用可能ホスト範囲
部署A50192.168.10.0/26192.168.10.1〜62
部署B25192.168.10.64/27192.168.10.65〜94
部署C10192.168.10.96/28192.168.10.97〜110

5. 演習問題

問題:

192.168.1.0/24 のネットワークを以下の要件で設計してください。

  • サーバ部門:60台
  • 営業部門:30台
  • 管理部門:12台

各部門に対して適切なサブネットマスクを求め、アドレス範囲を割り当ててください。

解答例:

  • サーバ部門:/26(64台) → 192.168.1.0/26(192.168.1.0〜63)
  • 営業部門:/27(32台) → 192.168.1.64/27(192.168.1.64〜95)
  • 管理部門:/28(16台) → 192.168.1.96/28(192.168.1.96〜111)

6. まとめ

  • VLSMは、ネットワークアドレスを無駄なく使うための技術。
  • 必要ホスト数に応じて異なるマスク長を使う。
  • 上位ネットワークから順に大きいサブネットを割り当てるのがポイント。

VLSMを理解することで、ネットワーク設計の柔軟性と効率を大きく高めることができます。 CCNA試験や実務ネットワーク設計でも必須のスキルなので、演習を繰り返して慣れていきましょう。

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