ネットワークを理解する上で必ず登場する「ルータ」と「スイッチ」。どちらも通信を中継する装置ですが、動作する層や役割が異なります。
本記事では、CCNA学習者やインフラエンジニア初心者でも理解できるように、ルータとスイッチの違いを整理し、具体的な利用例や動作の仕組みを詳しく解説します。
1. ルータとスイッチの基本的な役割
機器 | 主な役割 | 通信対象 | 主な機能 |
---|---|---|---|
ルータ (Router) | ネットワーク間の中継 | 異なるネットワーク間 (LAN ↔ WAN) | ルーティング、NAT、DHCP |
スイッチ (Switch) | 同一ネットワーク内の通信制御 | 同一セグメント内の端末 | MACアドレス学習、フレーム転送 |
比喩で理解すると:
スイッチは「社内の内線電話」、ルータは「社外とつなぐ代表電話」のようなものです。
2. OSI参照モデルにおける位置
機器 | 動作層(OSI参照モデル) | 扱うアドレス | 関連プロトコル |
---|---|---|---|
スイッチ | 第2層(データリンク層) | MACアドレス | Ethernet |
ルータ | 第3層(ネットワーク層) | IPアドレス | IP, ICMP, ARP |
なお、「レイヤ3スイッチ」と呼ばれる機器は、第2層の機能に加えてルーティング機能(第3層)も備えています。
3. 動作の仕組み(通信の流れ)
🔹 スイッチの動作
[PC1]──┬──[Switch]──┬──[PC2]
│ └──[PC3]
- スイッチは受信したフレームのMACアドレスを学習し、対応するポートへ転送します。
- 同一ネットワーク内での通信を効率的に中継します。
🔹 ルータの動作
[LAN1]──[Router]──[LAN2]
- 異なるネットワーク間でパケットを中継します。
- IPアドレスを基にルーティングテーブルから最適経路を選択します。
4. 実際の利用シーン
利用場所 | 使用機器 | 目的 |
---|---|---|
社内LAN | スイッチ | PC・プリンタなどを接続 |
インターネット接続 | ルータ | 社内ネットワークと外部を接続 |
部門間の通信制御 | ルータ/L3スイッチ | サブネット間通信の制御 |
補足: 家庭用Wi-Fiルータは、実際には「スイッチ+ルータ+無線アクセスポイント」が一体化された機器です。
5. 確認方法
ルータでルーティング確認
show ip route
正常例: 適切な宛先ネットワークがルーティングテーブルに表示される。
異常例: ルートが表示されず、宛先にパケットが届かない。
スイッチでMACアドレス確認
show mac address-table
正常例: 各ポートに接続されたMACアドレスが学習されている。
異常例: MACアドレスが学習されていない、または誤ったポートに記録されている。
6. 主な原因と解決方法
原因 | 説明 | 解決方法 |
---|---|---|
ルータ設定ミス | ルーティングテーブルに誤った経路が設定されている | show ip route で経路確認し、ip route コマンドで正しい静的ルートを設定 |
スイッチのポート設定不備 | VLAN設定やポートモードの誤り | show vlan brief で所属VLANを確認し、正しく修正 |
ケーブルや物理接続の問題 | リンクダウンや速度不一致 | 物理ケーブル、ポート状態をshow interfaces で確認し、再接続 |
アドレス設定ミス | IPアドレスまたはサブネットマスクの誤設定 | ip address 設定を見直し、同一セグメントであることを確認 |
7. 原因と解決方法の対応表
原因 | 対応する解決策 |
---|---|
ルータ設定ミス | ルート再設定(ip route ) |
スイッチ設定不備 | VLAN設定確認・修正 |
物理接続不良 | ケーブル交換/ポート再設定 |
アドレス設定ミス | IP・サブネットの整合確認 |
8. まとめ
- スイッチは同一ネットワーク内の通信を制御(L2)。
- ルータは異なるネットワーク間を中継(L3)。
- CCNAでは両者の動作層・役割・設定コマンドを正確に理解することが重要。