OSPFネットワークでは、複数のルーティングプロセスや他のプロトコル(RIP、EIGRPなど)と連携することがあります。 その際に必要なのが 「再配布(Redistribution)」 と 「ルートサマリー(経路集約)」 です。 この記事では、それぞれの仕組みと設定例を初心者にもわかりやすく解説します。
目次
1. OSPF 再配布とは
再配布(Redistribution)とは、別のルーティングプロトコルやスタティックルートをOSPFへ取り込むことです。 これにより、OSPF外のネットワークと通信が可能になります。
再配布の例:
- RIP → OSPF にルートを流す
- 静的ルート(static) → OSPF に流す
- EIGRP → OSPF へ再配布
OSPFでは、外部経路として以下の2種類に分類されます。
タイプ | 名称 | コスト計算 | 特徴 |
---|---|---|---|
Type 1(E1) | External Type 1 | 外部コスト+内部コスト | 経路全体のコストを考慮 |
Type 2(E2) | External Type 2 | 外部コストのみ | デフォルト。内部経路距離を無視 |
2. 再配布の必要性と注意点
異なるルーティングプロトコルを使う環境では、ルート情報の共有ができないため、再配布が必須です。 しかし、設定を誤るとループや不整合が発生することがあります。
主な注意点:
- 複数プロトコル間で再配布を繰り返すとループが発生する
- 不要な経路まで流すとルーティングテーブルが肥大化
- フィルタリング(route-mapなど)で制御するのが基本
3. OSPF での再配布設定例(Cisco IOS)
静的ルートを OSPF に再配布する例
R1(config)# ip route 192.168.10.0 255.255.255.0 10.0.0.2
R1(config)# router ospf 1
R1(config-router)# redistribute static subnets
再配布したルートは、OSPFネットワーク内では「O E2(外部ルート Type 2)」として表示されます。
確認コマンド
R1# show ip route ospf
O E2 192.168.10.0/24 [110/20] via 10.0.0.2, 00:00:30, GigabitEthernet0/0
ポイント:
必要なサブネットのみ再配布する場合は、route-map
を併用します。
R1(config)# route-map STATIC_TO_OSPF permit 10
R1(config-route-map)# match ip address 10
R1(config)# access-list 10 permit 192.168.10.0 0.0.0.255
R1(config)# router ospf 1
R1(config-router)# redistribute static subnets route-map STATIC_TO_OSPF
4. ルートサマリー(経路集約)とは
ルートサマリー(Route Summarization)とは、複数の経路をひとつの大きなプレフィックスにまとめて広告する技術です。 これにより、ルーティングテーブルの効率化とOSPFトラフィックの削減が可能になります。
サマリーのメリット:
- LSA(リンクステート広告)の数を減らす
- ルータの負荷軽減
- ネットワーク構造を簡潔に保つ
5. エリア間サマリーと ASBR サマリーの違い
種類 | 設定場所 | 対象ルート | コマンド |
---|---|---|---|
エリアサマリー | ABR(Area Border Router) | エリア間ルート | area <ID> range <network> <mask> |
ASBRサマリー | ASBR(再配布ルータ) | 外部ルート | summary-address <network> <mask> |
6. サマリー設定例と確認方法
① エリア間サマリー設定例(ABRで実施)
R2(config)# router ospf 1
R2(config-router)# area 1 range 192.168.0.0 255.255.252.0
→ 192.168.0.0/24 ~ 192.168.3.0/24 が 192.168.0.0/22
に集約されます。
② ASBRサマリー設定例(再配布ルータで実施)
R3(config)# router ospf 1
R3(config-router)# summary-address 172.16.0.0 255.255.0.0
→ 外部ルート(Type 5 LSA)を集約して広告。
確認コマンド
R2# show ip ospf database summary
R3# show ip ospf database external
7. 再配布とサマリーの使い分けまとめ
項目 | 再配布(Redistribution) | サマリー(Summarization) |
---|---|---|
目的 | 異なるプロトコル間で経路共有 | 経路情報の簡略化・圧縮 |
設定対象 | ASBR | ABR または ASBR |
影響範囲 | OSPF外部ネットワーク全体 | OSPF内のLSA構成 |
注意点 | ループ防止とフィルタ設定 | 誤集約による通信断に注意 |
まとめ
- OSPF再配布は、異なるプロトコル間の経路交換に必要
- ルートサマリーは、経路の集約による最適化手法
- 再配布はループ防止・フィルタ制御が重要
- サマリーはABRまたはASBRで実施可能
要点:
再配布は「外部とつなぐ技術」、サマリーは「内部を最適化する技術」。 この2つを使い分けることで、大規模OSPFネットワークでも安定した運用が可能になります。
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