OSPF(Open Shortest Path First)は、CCNA学習でも特に重要なルーティングプロトコルの一つです。 本記事では、OSPFのエリア設計とDR/BDR(指定ルータ/バックアップ指定ルータ)の仕組みについて、初学者にもわかりやすく整理します。
目次
🔹 OSPF の基本構造
OSPFはリンクステート型ルーティングプロトコルで、ネットワーク全体の構造をルータ同士が共有し、最短経路を自動的に計算します。 この際に重要になるのが「エリア」の概念です。
エリアを設計することで、ネットワーク全体のLSA(Link-State Advertisement)情報量を制御し、処理負荷を軽減できます。
🏗️ OSPF のエリア構成
OSPFではネットワークを階層構造で設計します。基本的な構成は次の通りです。
🔸 エリアの種類と特徴
エリア種別 | 説明 | 特徴 |
---|---|---|
バックボーンエリア(エリア0) | OSPF全体の中核となるエリア。全ルータが最終的にここを経由して通信。 | 他のエリアは必ずエリア0と接続する必要がある。 |
通常エリア | エリア0に接続された標準的なエリア。 | すべてのLSAタイプを受け取る。 |
スタブエリア | 外部経路情報(Type5 LSA)を遮断するエリア。 | 外部経路が不要なエリアで使用される。 |
完全スタブエリア | AS外部経路だけでなく、エリア間経路(Type3 LSA)も遮断。 | 1本のデフォルトルートのみで通信する。 |
🔸 エリア設計の基本ルール
- 全エリアはエリア0(バックボーン)と直接接続する。
- 異なるエリア間の通信は必ずABR(Area Border Router)を経由。
- ASBR(Autonomous System Boundary Router)は外部ネットワークと接続。
エリア構成イメージ:
┌───────────────┐
│ エリア 1(支店A)│
└───────┬───────┘
│
┌───────────────┐
│ エリア 0(バックボーン) │
└───────┬───────┘
│
┌───────────────┐
│ エリア 2(支店B)│
└───────────────┘
🔹 OSPF のルータタイプ
エリア設計を理解するうえで、ルータの役割分類を覚えることが大切です。
ルータタイプ | 役割 | 所属エリア |
---|---|---|
内部ルータ | 1つのエリア内だけに存在するルータ。 | 単一エリア |
ABR(Area Border Router) | 複数エリアに属し、エリア間の経路情報を交換する。 | 複数エリア |
ASBR(Autonomous System Boundary Router) | 他のルーティングプロトコル(例:BGP、RIP)と接続。 | OSPF + 外部ネットワーク |
🔸 DR(Designated Router)と BDR(Backup Designated Router)の仕組み
OSPFでは、マルチアクセスネットワーク(例:Ethernet)上でLSAのやり取りを効率化するために、 指定ルータ(DR)とバックアップ指定ルータ(BDR)が選出されます。
選出の目的
- 全ルータ同士でフルメッシュ通信するとLSA交換が膨大になる。
- DRを中心に情報を集約し、負荷を削減する。
イメージ図:
┌──────────────┐
│ DR(指定ルータ) │
└───────┬───────┘
/ | \
R1 R2 R3
DR/BDR の選出ルール
条件 | 説明 |
---|---|
① 優先度(OSPF Priority) | 値が大きいルータがDRに選出される(0にすると選出対象外)。 |
② Router ID | 優先度が同一の場合、Router IDが大きい方が優先。 |
設定例(Cisco IOS)
Router(config)# interface GigabitEthernet0/0
Router(config-if)# ip ospf priority 200
DR/BDRの選出はネットワークが再起動するまで保持されます。 途中で優先度を変更しても即時再選出はされないため、再起動またはOSPFプロセスのリセットが必要です。
Router# clear ip ospf process
📘 OSPFエリア設計とDR/BDRまとめ表
項目 | 内容 |
---|---|
エリア0 | バックボーン。全エリアを統括する中心。 |
通常エリア | 基本的なエリア構成。すべてのLSAを受け取る。 |
スタブ系エリア | 外部経路を遮断してトラフィック軽減。 |
ABR / ASBR | 異なるエリア・他プロトコル間を中継。 |
DR / BDR | マルチアクセス環境でLSAを集約・中継する代表ルータ。 |
💡 まとめ
- OSPFは「エリア設計」と「ルータの役割分担」で効率的にスケールできる。
- DR/BDRはLSAトラフィックを削減し、ネットワークの安定性を高める。
- 実装時はエリア0との接続と、優先度設定を特に注意する。
次回は「OSPFのコスト計算とSPFアルゴリズムの仕組み」を詳しく解説します。 エリア設計を理解したうえで経路選定ロジックを学ぶと、CCNA合格に向けた理解が一層深まります。
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