IDS / IPS の仕組みと導入ポイント

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ネットワークのセキュリティを強化する上で、IDS(Intrusion Detection System:侵入検知システム)IPS(Intrusion Prevention System:侵入防止システム) は非常に重要な役割を担います。 本記事では、IDS / IPS の仕組み・動作原理・導入時の注意点をわかりやすく解説します。

目次

1. IDS / IPS とは?

まず、両者の違いを明確にしましょう。

項目IDS(侵入検知)IPS(侵入防止)
役割攻撃や不正アクセスを検知し、アラートを出す攻撃を検知し、自動でブロック・防御を行う
動作モード監視(モニタリング)インライン(通信経路上で制御)
影響範囲ネットワークに影響を与えないトラフィックを遮断するため遅延・誤検知リスクがある
目的検知・可視化防御・遮断

簡単に言えば、IDS は「監視カメラ」、IPS は「セキュリティゲート」といえます。

2. IDS / IPS の動作原理

IDS / IPS は、主に以下の方法で不正通信を検知します。

① シグネチャ(Signature)ベース検知

既知の攻撃パターン(シグネチャ)をデータベース化し、通信内容と照合して検出します。 ウイルススキャンのように「既知の攻撃」に強いですが、新しい攻撃(ゼロデイ攻撃)には弱点があります。

② アノマリ(Anomaly)ベース検知

正常な通信パターンから逸脱した挙動を検知する手法です。 未知の攻撃を検出できる反面、誤検知(false positive)が多くなる傾向があります。

③ ハイブリッド検知

上記2つを組み合わせ、既知と未知の両方の攻撃を検知できるようにしたものです。 現在の多くの商用IPSはこの方式を採用しています。

3. IDS / IPS の設置位置

導入効果を最大化するには、ネットワーク内での設置位置が重要です。

  • IDS:ミラーポート(SPANポート)やタップ(TAP)からトラフィックを受け取り監視
  • IPS:通信経路上(ファイアウォールの前後など)にインライン設置し、攻撃を遮断

例)
[インターネット] ─ [FW] ─ [IPS] ─ [社内LAN]        └─(ミラー)─ [IDS]

4. IDS / IPS が検知・防御する主な攻撃例

  • ポートスキャン・サービススキャン
  • DDoS攻撃(分散型サービス妨害)
  • SQLインジェクション
  • XSS(クロスサイトスクリプティング)
  • マルウェア感染通信
  • ブルートフォース攻撃(総当たり認証攻撃)

これらはファイアウォールでは防ぎきれない「アプリケーション層の攻撃」も対象とする点が特徴です。

5. 導入・運用時のポイント

① シグネチャの更新を自動化する

攻撃手法は日々進化しています。ベンダー提供の最新シグネチャを自動で更新し、常に最新状態を維持しましょう。

② 誤検知・過検知をチューニングする

特定の正規通信が「攻撃」と誤認される場合、除外ルール(ホワイトリスト)を設定して調整します。

③ ログ分析・アラート連携を行う

SIEM(Security Information and Event Management)と連携することで、検知結果を集約・分析し、迅速な対応が可能になります。

④ IPS はネットワーク構成に注意

IPSはトラフィック経路上に設置されるため、障害時の影響範囲が大きいです。 バイパス構成やフェイルオープン機能を活用して可用性を確保しましょう。

6. IDS / IPS の導入形態

導入形態概要特徴
オンプレミス型企業内ネットワークに設置高い制御性・カスタマイズ性
クラウド型SaaS / FWaaS として提供管理が容易・拡張性が高い
ホスト型サーバーやエンドポイントに直接導入内部攻撃の検出に有効

7. まとめ

  • IDS:不正を「検知」して可視化するシステム
  • IPS:不正を「遮断」して防御するシステム
  • 両者を組み合わせることで、検知から防御まで包括的な対策が可能
  • 誤検知の調整・シグネチャ更新・ログ管理が運用の鍵

IDS / IPS はファイアウォールやアンチウイルスと並ぶ重要なセキュリティレイヤーです。 設置位置・設定・チューニングを正しく理解し、運用体制を整えることが安全なネットワーク運用の第一歩です。

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