AWSでEC2やRDSなどを利用するとき、避けて通れないのがAmazon VPC(Virtual Private Cloud)です。
VPCはAWSネットワークの土台となるサービスであり、SAA(AWS Certified Solutions Architect – Associate)でも非常に重要な分野です。
しかし、AWSを初めて学習する方にとっては、「VPCとは何なのか」「CIDRの/16や/24は何を表しているのか」「VPCとサブネットは何が違うのか」「ルートテーブルは何のためにあるのか」といった部分が分かりにくいのではないでしょうか。
本記事では、AWSネットワークを初めて学習する方に向けて、VPC・CIDR・サブネット・ルートテーブルの仕組みと関係を基礎から順番に解説します。
📚 SAA試験対策ボックス
| 試験頻出度 | ★★★★★ |
|---|---|
| 重要度 | ★★★★★ |
| 関連ドメイン | セキュアなアーキテクチャの設計 / 弾力性に優れたアーキテクチャの設計 / 高性能なアーキテクチャの設計 |
| 重要キーワード | VPC / CIDR / サブネット / AZ / ルートテーブル / localルート |
この記事で覚えること
- VPCはAWS上の仮想ネットワーク
- CIDRはIPアドレス範囲を表す
- サブネットはVPCを分割したネットワーク
- サブネットは1つのAZに属する
- ルートテーブルは通信経路を決定する
Amazon VPCとは?
Amazon VPC(Virtual Private Cloud)は、AWS上に論理的に分離された仮想ネットワークを作成できるサービスです。
簡単に言えば、AWS上に作る「自分専用のネットワーク空間」です。
オンプレミス環境では、ルーターやスイッチを使用してネットワークを構築し、その中へサーバーを配置します。
AWSでは、物理ネットワーク機器を自分で用意する代わりにVPCを作成し、その中へEC2などのAWSリソースを配置します。
覚え方
VPC = AWS上に作る大きな仮想ネットワーク
サブネット = VPCをさらに分割した小さなネットワーク
VPCとリージョン・AZの関係
VPCはリージョン単位で作成され、リージョン内の複数のアベイラビリティーゾーン(AZ)にまたがって利用できます。
一方、サブネットは1つのAZにのみ属します。
| 要素 | 範囲 |
|---|---|
| リージョン | 複数のAZを含む |
| VPC | リージョン内に作成し、複数AZにまたがれる |
| サブネット | 1つのAZにのみ属する |
📘 SAA試験ポイント
VPCはリージョンレベル、サブネットはAZレベルと覚えておきましょう。
複数AZへEC2を配置する場合、それぞれのAZにサブネットを用意します。

CIDRとは?
VPCを作成するときには、そのVPCで利用するIPアドレスの範囲を指定します。
そのIPアドレス範囲を表すために利用するのがCIDR(Classless Inter-Domain Routing)です。
例えば、次のように指定します。
10.0.0.0/16
この「10.0.0.0/16」全体で、VPCが利用するIPv4アドレスの範囲を表しています。
CIDRの「/16」「/24」は何を意味する?
IPv4アドレスは32ビットで構成されています。
CIDRの「/16」「/24」といった数字は、その32ビットのうち、先頭から何ビットをネットワーク部として利用するのかを表します。
例えば、
10.0.0.0/16
の場合、先頭16ビットがネットワーク部です。
一方、
10.0.1.0/24
の場合は先頭24ビットがネットワーク部となり、残り8ビットがホスト部となります。
| CIDR | ホスト部 | IPv4アドレス総数 |
|---|---|---|
| /16 | 16ビット | 65,536 |
| /20 | 12ビット | 4,096 |
| /24 | 8ビット | 256 |
| /28 | 4ビット | 16 |
CIDRの覚え方
「/」の後ろの数字が小さいほどネットワークは大きく、数字が大きいほどネットワークは小さくなります。

プライベートIPv4アドレスとは?
VPCでは、一般的にプライベートIPv4アドレスの範囲を利用してネットワークを設計します。
| CIDR | IPアドレス範囲 |
|---|---|
| 10.0.0.0/8 | 10.0.0.0 ~ 10.255.255.255 |
| 172.16.0.0/12 | 172.16.0.0 ~ 172.31.255.255 |
| 192.168.0.0/16 | 192.168.0.0 ~ 192.168.255.255 |
💼 実務ではこう考える
将来的にVPCピアリング、Transit Gateway、Site-to-Site VPN、Direct Connectなどで別ネットワークと接続する場合、接続先とCIDRが重複しないように設計することが重要です。
サブネットとは?
サブネットとは、VPCのIPアドレス範囲をさらに分割したネットワークです。
例えば、
VPC:10.0.0.0/16
を作成した場合、その中に次のようなサブネットを作成できます。
Subnet-A:10.0.1.0/24
Subnet-B:10.0.2.0/24
Subnet-C:10.0.3.0/24
つまり、VPCで大きなIPアドレス範囲を確保し、その範囲を用途に応じてサブネットへ分割するというのが基本的な設計です。
サブネットのCIDRはVPCの範囲内にする
サブネットに指定するCIDRは、VPCへ割り当てられているCIDRの範囲内である必要があります。
例えば、
VPC:10.0.0.0/16
であれば、
10.0.1.0/24
10.0.2.0/24
10.0.10.0/24
などをサブネットとして作成できます。
サブネットのCIDRは重複できない
同じVPC内に作成するサブネットのIPv4 CIDRブロックは、互いに重複させることができません。
例えば、
Subnet-A:10.0.1.0/24
Subnet-B:10.0.2.0/24
は問題ありません。
しかし、
Subnet-A:10.0.1.0/24
Subnet-B:10.0.1.0/24
のような構成は作成できません。
1つのサブネットは1つのAZに所属する
AWSのサブネットには非常に重要なルールがあります。
1つのサブネットは、必ず1つのアベイラビリティーゾーン(AZ)に所属します。
1つのサブネットを複数AZへまたがって配置することはできません。
📘 SAA試験ポイント
高可用性を求められる場合は、複数AZへリソースを分散配置する構成が基本です。
そのため、各AZにサブネットを用意します。
AWSではサブネット内の5つのIPv4アドレスが予約される
AWSのサブネットでは、CIDR内のIPv4アドレスをすべてEC2などへ割り当てられるわけではありません。
各サブネットの最初の4つと最後の1つ、合計5つのIPv4アドレスはAWSによって予約されています。
例えば、
10.0.1.0/24
というサブネットの場合、次の5つが予約されます。
| IPアドレス | 用途 |
|---|---|
| 10.0.1.0 | ネットワークアドレス |
| 10.0.1.1 | VPCルーター |
| 10.0.1.2 | DNSサーバー用 |
| 10.0.1.3 | AWSが将来使用するために予約 |
| 10.0.1.255 | ネットワークブロードキャストアドレス用に予約 |
そのため、/24には256個のIPv4アドレスがありますが、AWSリソースへ割り当て可能なのは251個です。
ルートテーブルとは?
ルートテーブル(Route Table)は、ネットワークトラフィックをどこへ転送するのかを決めるルールの集合です。
ルートテーブルでは、主に次の2つを指定します。
- Destination:宛先
- Target:転送先
| Destination | Target | 意味 |
|---|---|---|
| 10.0.0.0/16 | local | VPC内部への通信 |
localルートとは?
VPCのルートテーブルには、VPC内部で通信するためのlocalルートがあります。
VPCのCIDRが、
10.0.0.0/16
であれば、次のようなルートがあります。
| Destination | Target |
|---|---|
| 10.0.0.0/16 | local |
このlocalルートによって、同じVPC内にある異なるサブネット間でルーティングできます。
重要
別サブネットだから通信できないわけではありません。
同じVPC内であればlocalルートによって相互にルーティングできます。
ただし、実際に通信できるかどうかはセキュリティグループやネットワークACLなどの設定にも左右されます。
メインルートテーブルとは?
VPCを作成すると、そのVPCにはメインルートテーブル(Main Route Table)が存在します。
サブネットには必ず1つのルートテーブルが関連付けられます。
特定のルートテーブルを明示的に関連付けていないサブネットは、VPCのメインルートテーブルを使用します。
また、必要に応じてカスタムルートテーブルを作成し、特定サブネットへ関連付けることもできます。
サブネットとルートテーブルの関係
| 組み合わせ | 可能? |
|---|---|
| 1サブネット → 1ルートテーブル | 〇 |
| 1サブネット → 複数ルートテーブル | × |
| 複数サブネット → 1ルートテーブル | 〇 |
ルートテーブルは最も具体的なルートを選択する
ルートテーブルに複数のルートが存在する場合、宛先IPアドレスに一致するルートの中から、最も具体的なルートが選択されます。
この仕組みを最長プレフィックス一致(Longest Prefix Match)と呼びます。
📘 SAA試験ポイント
ルートテーブルは上から順番に評価するのではありません。
宛先に一致するルートの中で、最も具体的なCIDRが優先されます。
0.0.0.0/0とは?
AWSのルートテーブルで頻繁に登場するのが、
0.0.0.0/0
です。
これはすべてのIPv4アドレスを表します。
そのため、
Destination:0.0.0.0/0
Target:○○
というルートは、より具体的なルートに一致しなかったIPv4通信を○○へ送る、という意味になります。
この0.0.0.0/0は、次の記事で学習するインターネットゲートウェイ(IGW)やNAT Gatewayで非常に重要になります。
VPC・CIDR・サブネット・ルートテーブルの関係
| 要素 | 役割 |
|---|---|
| VPC | AWS上の論理的に分離された仮想ネットワーク |
| CIDR | ネットワークで利用するIPアドレス範囲を表す |
| サブネット | VPCのIPアドレス範囲を分割したネットワーク |
| ルートテーブル | 宛先に応じて通信をどこへ転送するか決める |
⚠ 初心者が間違えやすいポイント
- VPCとサブネットは同じものではない
- VPCは複数AZにまたがれるが、サブネットは1つのAZにのみ属する
- /24より/16の方が大きなネットワーク
- /24でも256個すべてのIPアドレスを利用できるわけではない
- 別サブネットでも同一VPC内ならlocalルートでルーティングできる
- ルートテーブルは通信の許可・拒否を決めるものではない
🔥 SAA試験頻出ポイント
- VPCはリージョン単位で作成される
- 1つのサブネットは1つのAZに属する
- 同一VPC内のサブネットCIDRは重複できない
- AWSでは各サブネットの5つのIPv4アドレスが予約される
- localルートでVPC内部をルーティングする
- 1つのサブネットは1つのルートテーブルに関連付けられる
- ルート選択では最長プレフィックス一致が重要
- 0.0.0.0/0はすべてのIPv4アドレスを表す
AWS公式試験ガイドとの関連
VPCに関する知識は、SAAの複数の設計領域に関係します。
特に、セキュアなネットワーク設計、高可用性を考慮した複数AZ構成、AWSリソース間の通信経路、オンプレミス環境との接続などを理解するための基礎となります。
VPC・CIDR・サブネット・ルートテーブルは個別に暗記するのではなく、AWS上で通信がどのように流れるのかを意識して理解しましょう。
まとめ
Amazon VPCは、AWSネットワークを理解するための土台となるサービスです。
まずは次の4つを整理して覚えておきましょう。
- VPC:AWS上の仮想ネットワーク全体
- CIDR:ネットワークのIPアドレス範囲
- サブネット:VPCを分割したネットワーク
- ルートテーブル:通信をどこへ送るか決める
特にSAAでは、VPCは複数AZにまたがれる一方で、サブネットは1つのAZにのみ属するという違いが重要です。
また、ルートテーブルは「通信を許可する仕組み」ではなく、「通信をどこへ送るのかを決める仕組み」であることも覚えておきましょう。

