IPアドレス設計の変更は、拠点統合、セキュリティ強化、クラウド移行、ネットワーク更改などで必ず発生します。 しかし、事前準備が不十分だと高確率で通信障害が発生します。
- IPを変えただけなのに一部だけ通信できない
- サーバは正常なのに業務システムが停止
- 想定外の影響範囲で大規模障害に発展
本記事では、IP設計変更時に必ず起きる典型トラブルと 具体的な確認コマンド・解決手順を体系的に解説します。
目次
1. ルーティング未反映による通信断
症状
- 同一セグメント内は通信可能
- 他セグメントへ通信不可
- 片方向通信になる
原因
- 静的ルート未更新
- OSPF/EIGRP/BGP広告漏れ
- デフォルトルート未修正
- PBR設定未変更
確認コマンド
Cisco
show ip route
show ip protocols
show run | include ip route
Linux
ip route
route -n
対処方法
- 新セグメントがルーティングテーブルに存在するか確認
- 戻り経路も必ず確認(非対称ルーティング防止)
- 動的ルーティングの広告範囲再確認
2. ACL・ファイアウォール未更新
症状
- Pingは通るがアプリ通信不可
- 特定ポートのみ通信失敗
- FWログでDrop検知
確認コマンド
Cisco
show access-lists
show run | section access-list
FortiGate
show firewall policy
対処方法
- 旧IPの一括検索
- オブジェクトベース管理へ移行
- セキュリティグループも確認
3. DNS未更新・キャッシュ残存
症状
- IP直打ちは成功
- ホスト名では失敗
確認コマンド
Windows
nslookup hostname
ipconfig /flushdns
Linux
dig hostname
systemd-resolve --flush-caches
対処方法
- 変更前にTTLを短縮(例:86400 → 300秒)
- Aレコード・逆引き両方更新
- DNSキャッシュクリア
4. デフォルトゲートウェイ未変更
症状
- 同一VLAN内は通信可能
- 外部通信不可
確認コマンド
Windows
ipconfig
Linux
ip route | grep default
対処方法
- DHCP Option 003更新
- 固定IP端末の棚卸し
- テンプレートVM確認
5. NAT設定未更新
症状
- 内部通信は正常
- 外部通信のみ失敗
確認コマンド(Cisco)
show ip nat translations
show run | section nat
対処方法
- Static NAT / Source NAT確認
- 公開サーバDNAT確認
- 双方向通信テスト実施
6. 監視・バックアップ設定漏れ
症状
- 監視アラート発生
- バックアップ失敗
確認ポイント
- SNMP送信先
- ログ転送先
- 監視対象IP直指定
7. ハードコードIP問題(最重要)
症状
- 一部業務アプリのみ停止
- 原因不明の接続失敗
確認コマンド
Linux
grep -R "旧IP" /etc/
Windows
findstr /S /I "旧IP" C:\*
対処方法
- IP直書き禁止
- FQDN統一
- 変更前の全サーバ検索必須
8. ARPキャッシュ残存
確認コマンド
Cisco
show ip arp
clear arp-cache
Windows
arp -a
arp -d *
9. 非対称ルーティング
確認コマンド
tracert 宛先IP
traceroute 宛先IP
双方向で必ず確認すること。
設計変更前チェックリスト
- ルーティング
- ACL/FW
- NAT
- DNS
- DHCP
- 監視
- アプリ設定
- 逆引きDNS
- ロードバランサ
- クラウド側セキュリティグループ
失敗しないためのベストプラクティス
① 旧IP一括検索
全機器・全サーバで旧IP検索を実施。
② TTL事前短縮
DNS変更数日前にTTLを短縮。
③ 並行運用期間を設計
新旧IP共存期間を設ける。
④ FQDN徹底
IP直書き禁止ポリシー導入。
まとめ
IP設計変更で発生するトラブルは、 ルーティング・セキュリティポリシー・DNS・NAT・ハードコードIP の5領域に集中しています。
IP変更は単なるアドレス変更ではありません。 IPに紐づく全依存関係の洗い出し作業です。
本記事のチェックリストを事前に実施すれば、大規模障害は高確率に防げます。
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