データセンターや拠点間設計で必ず議論になるテーマ:
- VLANをそのまま延伸するべきか?(L2延伸)
- 拠点ごとにL3で分割するべきか?(L3分割)
どちらにもメリット・デメリットがあり、 目的を誤ると将来的に必ず破綻します。
本記事では、
- 両者の技術的違い
- トラブル発生パターン
- 運用負荷の差
- 将来拡張性
- 具体的な判断基準
を体系的に整理します。 この記事だけで「自分の環境はどちらを選ぶべきか」明確に判断できます。
目次
1. L2延伸とは何か
L2延伸は、拠点やラック間で同一VLANをそのまま接続する構成です。
- 同一サブネットを維持
- IP変更不要
- VMライブマイグレーション容易
代表技術
- VLAN trunk延伸
- VXLAN
- EVPN
- OTV
2. L3分割とは何か
拠点やセグメントごとにサブネットを分割し、 ルーティングで接続する方式。
- ブロードキャスト分離
- 障害範囲限定
- 経路制御可能
3. 最大の違い:障害ドメイン
L2延伸の弱点
- ブロードキャスト嵐が全拠点へ波及
- ループ障害が全体停止に直結
- MACフラッピング拡散
障害が“面”で広がる。
L3分割の特徴
- ルーティングで分離
- 問題はセグメント内に限定
障害が“点”で止まる。
4. よくある失敗パターン
① 「VM移行があるから」でL2延伸を選択
実際には:
- 移行頻度は低い
- IP変更も可能だった
結果:
- 巨大L2ドメイン誕生
- ARP爆発
- STP依存設計
② L3分割なのに設計が甘い
- 経路集約なし
- 非対称ルーティング
- FW跨ぎで通信断
L3は設計力が必要。
5. 判断基準(ここが最重要)
| 条件 | L2延伸 | L3分割 |
|---|---|---|
| VMライブマイグレーション必須 | ◎ | △ |
| 大規模環境(1000台以上) | × | ◎ |
| 障害範囲を限定したい | × | ◎ |
| IP変更が困難 | ◎ | △ |
| 将来拡張予定あり | △ | ◎ |
6. トラフィック観点での選択
East-West中心(サーバ間通信多い)
→ L3分割+Leaf-Spine推奨
North-South中心(外部通信多い)
→ どちらも可。ただし将来拡張を考慮
7. 運用難易度比較
L2延伸の運用負担
- STP管理
- MAC監視
- ARP増大対策
L3分割の運用負担
- ルーティング設計
- 経路制御
- FW設計
短期はL2が楽、長期はL3が安定。
8. 将来を見据えた設計原則
- L2は最小化する
- ブロードキャストドメインは小さく
- 拡張前提ならL3分割
- 必要な箇所のみL2延伸
9. 現場で使える最終判断フロー
Step1
本当にIP変更不可か?
Step2
将来台数は増えるか?
Step3
障害時の影響範囲をどこまで許容できるか?
Step4
運用チームはルーティング設計に習熟しているか?
10. 結論
迷ったらL3分割を選ぶ。
L2延伸は特殊要件対応策であり、 標準解ではありません。
スケール・安定性・障害限定性を重視するなら、 L3分割が中長期的に最適です。
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