ARPタイムアウト値は、多くのネットワークで
「デフォルトのまま放置されがち」な設定項目です。
しかし実務では、
冗長切替・ルーティング変更・FW/NAT・無線LAN などと組み合わさることで、
通信断・不安定・切替遅延の原因になります。
本記事では、
ARPタイムアウト値をどう決めるべきかを、 設計思想・実例・推奨値まで含めて解説します。
目次
ARPタイムアウト値とは
ARPタイムアウト値とは、
IPアドレスとMACアドレスの対応情報を保持する時間です。
この時間が切れると、再度ARPリクエストが送信され、
最新のMAC情報に更新されます。
なぜARPタイムアウト値が重要なのか
- 冗長GW切替時の通信断時間に直結
- ルーティング切替後の不安定要因
- MAC変更・移動への追従速度に影響
- ブロードキャスト量にも影響
短すぎても問題、長すぎても問題という、 典型的な「設計者泣かせ」のパラメータです。
ARPタイムアウトが長すぎる場合の問題
代表的な症状
- HSRP/VRRP切替後に通信断が続く
- 数分〜数十分後に自然復旧
- 一部端末のみ通信不可
原因
端末やスイッチが
旧MACアドレスを長時間保持するため。
実例
- ARP timeout:4時間
- HSRP切替後、最大4時間通信断
ARPタイムアウトが短すぎる場合の問題
代表的な症状
- ARPトラフィック増加
- CPU使用率上昇
- 無線LANでの遅延・切断
原因
ARP再解決が頻発し、
ブロードキャストが過剰になるため。
デフォルト値はどうなっているか
| 機器/OS | ARPタイムアウト |
|---|---|
| Cisco IOS(L3) | 4時間(14400秒) |
| Linux | 60秒〜数分(可変) |
| Windows | 2分〜10分(動的) |
※ ネットワーク機器は長め、端末は短めが一般的です。
実務での決め方(設計基準)
① 冗長構成があるか
- HSRP / VRRP / GLBP → 短め推奨
- 切替頻度が高い → 短め
② ネットワーク規模
- 小規模LAN → 短くても問題なし
- 大規模LAN → 長すぎない範囲で調整
③ 無線LAN・FWの有無
- 無線LAN多用 → 極端に短くしない
- FW越し通信 → Proxy ARP注意
実務でよく使われる推奨値
| 用途 | 推奨ARPタイムアウト |
|---|---|
| 端末GW(冗長あり) | 300〜900秒 |
| サーバ向けL3 | 600〜1800秒 |
| FW/境界L3 | 1200〜3600秒 |
「切替追従性」と「安定性」のバランスを重視します。
設定例(Cisco IOS)
interface Vlan10
arp timeout 600
※ グローバルではなく インターフェース単位 で調整するのが基本です。
ARPタイムアウト変更時の注意点
- 一気に短くしない
- 切替試験とセットで実施
- 無線・FW・サーバ側の挙動も確認
切り分け時のチェックリスト
- arp -a で保持時間を確認
- GARPが届いているか
- 時間経過で直るか
- MACテーブルと一致しているか
まとめ
ARPタイムアウト値は、
「短い=正解」「長い=安全」ではありません。
冗長設計・切替要件・ネットワーク規模を踏まえ、 意図を持って決めることが重要です。
通信断が「時間で直る」場合、 まずARPタイムアウトを疑う―― これが現場で最も役に立つ視点です。
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