「FWログでは許可されているのに通信できない」
「セッションは見えるがアプリが動かない」
このような FWトラブルの9割 は、
ログとセッションテーブルを“別々に見ている” ことが原因です。
本記事では、FWログとセッションテーブルを正しく読み合わせる実務手順 を、 通信フェーズ単位・失敗パターン別 に徹底解説します。
目次
なぜ「ログだけ」「セッションだけ」では不十分なのか
FWログが示すもの
- ポリシー判断(許可/拒否)
- 通信の「入口」の可否
セッションテーブルが示すもの
- 通信の状態(SYN / ESTABLISHED など)
- NAT変換の実体
- 戻り通信が成立しているか
ログ=入口の可否
セッション=通信の生死
この両方を突き合わせて初めて「真の原因」が見えます。
まず押さえるべき通信のライフサイクル
- パケット到達
- FWポリシー判定(ログ)
- セッション生成
- NAT変換
- 戻り通信
- セッション維持/終了
どのフェーズで止まっているか を特定するのが本記事のゴールです。
基本手順①:ログで「入口」を確認する
見るべきログのポイント
- Action:allow / deny
- ポリシー名
- 送信元 / 宛先IP・Port
- Hit数
典型ログ例
Allow TCP 203.0.113.50:51234 → 203.0.113.10:443 policy=INTERNET_TO_DMZ
この時点で分かること
- FWに通信は届いている
- ポリシーで遮断されていない
=次はセッションを見るフェーズ
基本手順②:セッションテーブルで「通信状態」を確認
確認項目(最重要)
- セッションの有無
- NAT前 / NAT後 IP
- TCP状態
- 最終通信時刻
セッション例
State: SYN_SENT
Original: 203.0.113.50:51234
Translated: 192.168.1.10:443
この時点で ログとセッションを必ず突き合わせます。
失敗パターン①:ログはAllow、セッションが存在しない
状態
- FWログ:Allow
- セッション:なし
原因
- ログはポリシー評価のみ(初期パケット)
- 即座に破棄されている
疑うポイント
- NAT設定漏れ
- サービス(Port)不一致
- ポリシー順序ミス
「ログOK=通信OK」ではありません。
失敗パターン②:SYN_SENT のまま進まない
ログ
Allow TCP ...
セッション
State: SYN_SENT
意味
- SYNは送った
- SYN/ACKが返ってこない
原因候補
- サーバ未起動
- サーバFW遮断
- 戻り経路不備(非対称)
FW外ではなく、FW内側を疑う段階 です。
失敗パターン③:セッションが一瞬で消える
症状
- セッション生成 → 即消失
ログと突き合わせる
- 再試行ごとにログは出る
- セッションが維持されない
典型原因
- 非対称ルーティング
- SNAT未設定
FWが戻り通信を受け取れていません。
失敗パターン④:ESTABLISHEDなのに通信不可
ログ
Allow TCP ...
セッション
State: ESTABLISHED
この時点での結論
FW・NATは正常
次に疑うべき層
- アプリケーションエラー
- SSL/TLS証明書
- MTU不一致
FW切り分けはここで終了 です。
ベンダー別 実務コマンド例
Cisco ASA / FTD
show conn
show xlate
Palo Alto
show session all filter
FortiGate
diagnose sys session list
最短で原因に辿り着く実務フロー
- FWログで通信が届いているか
- セッションが作成されているか
- TCP状態はどこで止まっているか
- NAT変換は正しいか
- 戻り通信は同一FWか
この順番を守るだけで、切り分け時間は1/3以下 になります。
設計・運用での再発防止策
- FWログとセッションを必ずセットで見る
- NAT通信は非対称を作らない
- 変更前後でセッション状態を確認
まとめ
- FWログ=入口の可否
- セッション=通信の成否
- 両者を突き合わせて初めて原因が確定する
FWトラブル対応力は、ログ×セッションを読めるか で決まります。
この記事の手順を「型」として身につけてください。
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