FWセッションテーブルで見る NAT通信の失敗パターン【実務トラブル完全解説】

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「NAT設定は正しいはずなのに通信できない」 「FWログは許可されているのに疎通しない」

このようなケースでは、FWのセッションテーブル を見ることで 通信がどこで壊れているか を一発で特定できます。

本記事では、NAT通信トラブルをセッション状態から読み解く方法 を 実務目線で体系的に解説します。

目次

FWセッションテーブルとは何か

FWは通過する通信を セッション(通信の状態) として管理しています。

送信元IP:Port  →  宛先IP:Port
NAT前 / NAT後
TCP状態(SYN_SENT / ESTABLISHED など)

NAT通信が成立しない場合、 セッションテーブルには必ず「異常な状態」が現れます。

NAT通信で見るべき基本項目

  • Original(NAT前)IP/Port
  • Translated(NAT後)IP/Port
  • セッション状態(TCP State)
  • 作成時間・最終通信時間

これらを正しく読めるようになると、原因切り分けが劇的に速くなります。

失敗パターン① SYN_SENT のまま止まる

セッション例

TCP SYN_SENT
203.0.113.50:51234 → 192.168.1.10:443

意味

  • SYNは送信された
  • SYN/ACKが返ってきていない

主な原因

  • 内部サーバが待ち受けていない
  • サーバ側FWで遮断
  • 戻り経路のルーティング不備

対処

  • サーバのLISTENポート確認
  • 戻り通信がFWを通過しているか確認

失敗パターン② セッションがすぐ消える

症状

  • セッションが一瞬で消える
  • 再試行しても確立しない

原因

  • 非対称ルーティング
  • 戻り通信が別FWを通過
  • SNAT未設定

解説

FWは 行きと戻りを同一セッションとして認識できない と 通信を破棄します。

失敗パターン③ NAT変換は見えるが通信が進まない

セッション例

Original: 10.0.0.10:52345
Translated: 203.0.113.10:52345
State: INIT

考えられる原因

  • Firewallポリシー未許可
  • サービス(ポート)不一致
  • ポリシー順序ミス

NATは通るがFWで落ちる 典型例です。

失敗パターン④ ESTABLISHED なのに通信できない

症状

  • セッションはESTABLISHED
  • アプリケーションが動かない

原因

  • アプリ層エラー
  • MTU不一致
  • SSL/TLSエラー

この場合、NAT・FWは正常 と判断できます。

失敗パターン⑤ タイムアウトで切断される

症状

  • 一定時間後に通信断
  • 再接続で復旧

原因

  • FWセッションタイムアウト短すぎ
  • 長時間通信アプリ未考慮

対処

  • セッションタイムアウト値調整
  • アプリ別ポリシー設計

FWベンダー別 セッション確認コマンド例

Cisco系

show conn
show xlate

Palo Alto

show session all filter

FortiGate

diagnose sys session list

実務での切り分け手順(最短ルート)

  1. セッションが作成されているか
  2. NAT変換が正しいか
  3. TCP状態はどこで止まっているか
  4. 戻り通信は同一FWか

セッションを見るだけで、8割のNATトラブルは解決できます。

設計・運用で防ぐポイント

  • NATとFWポリシーの対応表を作成
  • 非対称ルーティングを作らない
  • 長時間通信を考慮したタイムアウト設計

まとめ

  • NAT通信はセッション状態を見るのが最短
  • SYN_SENT / INIT / 消失 は重要なサイン
  • FWは「戻り通信」を非常に重視する

FWセッションテーブルは ネットワークトラブルの健康診断書 です。 必ず読む習慣を身につけましょう。

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