「Webページの表示が遅い」「たまに固まる」「時間帯によって極端に遅くなる」 このような事象は、原因が1箇所とは限りません。
本記事では、実務現場で即使えるように NW / DNS / Server / Browser の4レイヤに分けて、 再現性の高い切り分け手順を解説します。「どこから調べるべきか」「何を見れば答えが出るか」 が明確になります。
目次
全体像:遅延切り分けの考え方
Web表示までの流れは次の通りです。
Browser ↓ DNS名前解決 ↓ Network(LAN / WAN / Internet) ↓ Server(Web / AP / DB) ↓ Browser描画
上流から順に疑うのが鉄則です。
① Network(NW)が原因の場合
典型的な症状
- 時間帯によって遅い
- pingが不安定
- ファイル転送も遅い
確認手順
ping example.com
tracert example.com
見るべきポイント
- RTTが極端に高くないか
- 途中ホップで急激に遅くなっていないか
- パケットロスが発生していないか
よくある原因
- WAN帯域逼迫
- QoS未設定
- FWセッション枯渇
対応例
- 帯域使用率の確認
- 重要通信のQoS優先制御
- 非対称ルーティングの排除
② DNSが原因の場合
典型的な症状
- 最初の表示だけ遅い
- 更新すると速くなる
- 特定ドメインのみ遅い
確認手順
nslookup example.com
dig example.com
見るべきポイント
- 応答までの時間(Query time)
- TimeoutやRetryが発生していないか
よくある原因
- 外部DNSへのフォワード遅延
- キャッシュTTL不適切
- DNSサーバ高負荷
対応例
- 内部キャッシュDNS導入
- TTL設計見直し
- DNS冗長化
③ Server(Web / AP / DB)が原因の場合
典型的な症状
- ログイン後の動作が遅い
- 特定操作のみ遅い
- ピーク時に極端に遅くなる
確認手順
top
vmstat
iostat
見るべきポイント
- CPU使用率
- メモリスワップ発生有無
- ディスクI/O待ち
よくある原因
- アプリ処理遅延
- DBクエリ遅延
- コネクション枯渇
対応例
- SQLチューニング
- APスケールアウト
- LB配下の負荷分散
④ Browser(クライアント)が原因の場合
典型的な症状
- 特定ブラウザのみ遅い
- キャッシュクリアで改善
- 初回表示が遅い
確認手順
Chrome DevTools → Networkタブ
見るべきポイント
- Waiting(TTFB)が長いか
- JS / CSS 読み込み遅延
- HTTPステータスコード
よくある原因
- キャッシュ無効
- リソース過多
- HTTP/1.1使用
対応例
- HTTP/2 有効化
- 静的リソース最適化
- キャッシュ制御見直し
実務向け:即判断できる切り分け早見表
| 症状 | 最初に疑う箇所 |
|---|---|
| 最初だけ遅い | DNS / Browser |
| 常に遅い | NW / Server |
| 時間帯依存 | NW / Server |
| 特定操作のみ | Server |
まとめ
- Web遅延は複合要因が多い
- NW → DNS → Server → Browser の順で切り分け
- ツール結果から「遅い場所」を特定する
切り分けの型を身につけることで、 「感覚」ではなく「根拠ある説明」ができるようになります。
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