FWタイムアウト設計と長時間通信アプリの注意点

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「一定時間操作しないと通信が切れる」
「VPNや業務アプリが突然切断される」

このようなトラブルの原因として非常に多いのが、 ファイアウォール(FW)のセッションタイムアウトです。

本記事では、FWタイムアウトの仕組みを整理した上で、 長時間通信アプリで起きやすい問題と、実務での正しい設計・対処方法を解説します。

目次

FWタイムアウトとは何か

FWはステートフル動作を行い、通信をセッション単位で管理しています。

各セッションには「一定時間通信がなければ破棄する」という タイムアウト値が設定されています。

なぜタイムアウトが必要か

  • 不要なセッションの自動削除
  • メモリ・リソース枯渇防止
  • 異常通信の抑止

タイムアウトは必須の安全装置です。

代表的なタイムアウト種別

  • TCP Established:通信確立後の無通信時間
  • TCP Half-open:SYN未完了状態
  • UDP:ステートレス通信用
  • ICMP:ping等

特にTCP Establishedが長時間通信トラブルの中心になります。

長時間通信アプリとは

次のようなアプリは「通信は張りっぱなしだが、パケットは流れない時間が長い」 という特徴を持ちます。

  • VPN(SSL/IPsec)
  • RDP / SSH
  • 業務系Webアプリ
  • データベース管理ツール

よくある症状

  • 操作していないと切断される
  • 一定時間で必ず再ログインが必要
  • 通信再開時にエラー

アプリ側は接続維持しているつもりでも、 FWではセッションが消えている状態です。

FW側で何が起きているか

タイムアウト発生の流れ

  1. 通信確立(ESTABLISHED)
  2. 一定時間パケットなし
  3. FWがセッションを削除
  4. アプリが再送
  5. FWは「不正パケット」と判断

結果として、通信は突然遮断されます。

セッションテーブルでの見え方

問題発生時

  • セッションが存在しない
  • 再送パケットが破棄される

正常時

  • ESTABLISHED 状態を維持
  • timeout が延長され続ける

ありがちな誤った対処

  • タイムアウトを極端に長くする
  • any-any 許可で回避
  • FW再起動で誤魔化す

これらはセキュリティリスクや再発の原因になります。

正しい設計・対処方法

① アプリ仕様を確認

  • 推奨アイドル時間
  • KeepAlive有無

② FWタイムアウトの調整

  • 対象プロトコルのみ延長
  • グローバル変更は避ける

③ KeepAlive の活用

アプリ側で定期的に小さな通信を送ることで、 FWのセッションを維持できます。

実務での判断基準(目安)

  • 一般Web通信:300~600秒
  • 業務Web / API:900~1800秒
  • VPN / 管理系通信:3600秒以上

「必要な通信だけ延ばす」が基本方針です。

対処後の確認ポイント

  • 長時間放置後も切断されない
  • セッションが維持されている
  • 不要セッションが溜まっていない

結果例(改善後)

  • VPN切断が解消
  • 業務アプリの再ログイン不要
  • FW負荷は増加せず安定

まとめ

  • FWタイムアウトは通信断の盲点
  • 長時間通信アプリは特に影響を受けやすい
  • 「延ばしすぎない設計」が重要

FWトラブルは設定ミスではなく設計不足で起きることが多く、 タイムアウト設計を理解すると安定運用に直結します。

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