ネットワーク図は、適切な記法・レイアウト・凡例ルールを標準化することで、構成管理の精度向上・チーム内の共通理解・障害対応のスピード向上につながります。
この記事では、企業ネットワークでよく使われる標準的な記号、書き方テンプレート、必須要素、運用での落とし穴まで体系的に解説します。
目次
1. ネットワーク図の種類
ネットワーク図は目的ごとに使い分ける必要があります。実務で使われる主な種類は次の通りです。
① L1(物理配線図)
- 物理ケーブル(LANケーブル/光ファイバ)
- ラック配置、ポート番号
- 実機保守や現地作業で使用
② L2(スイッチング構成図)
- VLAN構成、トランクポート、STP構成
- フレームがどこを流れるか把握できる
③ L3(ルーティング構成図)
- IPアドレス/サブネット
- OSPF/BGPなどルーティングドメイン
- 経路トラブル調査に必須
④ ロジカル(論理構成図)
- L2/L3を統合した概念的な図
- 顧客向け資料、概要説明でよく使う
⑤ サービス構成図
- サーバー・アプリ・ネットワークの関係性
- 通信フローをわかりやすく表現
2. ネットワーク図で使う標準的な記号
■ デバイス系の記号(一般的な標準)
| 機器 | 記号(一般的表現) |
|---|---|
| L2スイッチ | 長方形+”SW”表記、またはスイッチアイコン |
| L3スイッチ | 長方形+”L3SW” |
| ルータ | 円形や円柱アイコン |
| FW | 壁/盾アイコン、もしくは”FW” |
| サーバ | ラックサーバ/箱アイコン |
| クラウド | クラウド形状アイコン(AWS/Azure/GCPなど) |
■ 接続線のルール
- 実線:物理接続(Ethernet, Fiber)
- 点線:論理接続(VLAN、VPN、GREなど)
- 太線:冗長経路や重要回線
■ 色のルール(おすすめ)
- 管理ネットワーク:青
- ユーザVLAN:緑
- サーバVLAN:オレンジ
- WANや外部通信:赤
3. 実務で統一すべき表記ルール
① IPアドレスの表記
- インターフェース名 + IPをセットで書く
- 例:
Gi0/1 - 192.168.1.1/24
② VLAN表記
- VLAN ID と VLAN名を両方記載
- 例:VLAN10(管理)
③ 機器名の標準命名
- 建屋-階-役割-番号 の形式がおすすめ
- 例:
DC1-F2-L3SW-01
④ ルーティングの表記
- OSPFエリア、BGP AS、VRRPグループIDを明記
⑤ どの図にも「凡例」を入れる
これは実務では極めて重要。標準化の要です。
4. レイヤ別テンプレート例(サンプル)
■ L2スイッチ構成(VLAN)図テンプレート
[ L3SW ] | Trunk [ L2SW1 ]--VLAN10/20/30 | [ L2SW2 ]
■ L3ルーティング図テンプレート
OSPF Area 0
[ L3SW1 ] -------- [ L3SW2 ]
| |
BGP Peering to ISP
■ サービスフロー図(通信経路)
User → FW → L3SW → AppServer → DB
5. ネットワーク図でよくある失敗と改善策
① 概念図と実装図が混ざっている
→ L1/L2/L3 を必ず分けて作成する
② IPが抜けている・VLANが不明
→ 必要な属性情報を「テンプレ化」して記入漏れを防止
③ 配置順序がバラバラで読みづらい
→ 左から右へ流れる構成(WAN→FW→L3→L2→サーバ/端末)
④ 更新が追いつかず図が古くなる
→ 差分更新日を図中に記載する
6. ネットワーク図の品質チェックリスト
- 凡例(Legend)が記載されているか
- 機器名が標準命名規則で表記されているか
- IP・サブネットが正確か
- VLAN ID/名前が書かれているか
- 冗長構成が正しく表現されているか
- 更新日が記載されているか
まとめ
ネットワーク図を標準化することで、以下のメリットが得られます。
- 構成の把握が容易になる
- 障害対応が高速化
- 引継ぎ・保守が効率化
- 仕様管理の品質が向上
企業ネットワークでは「正しい記法」以上に図を更新し続ける運用文化の構築が重要です。 この記事のテンプレートをベースに、自社標準を整備してみてください。
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