ネットワーク障害対応の初動マニュアル【現場で使える手順書】

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本記事では、現場の運用保守で最初に必ず行うべき初動対応を、
チェックリスト形式で再現性のあるマニュアルにまとめています。

原因究明より先に「止血作業」を確実に行うことで被害を最小化できます。
現場対応者・一人情シス・ネットワーク担当者に必須の内容です。

目次

📝 1. 初動対応の目的

  • 影響範囲の特定(どこまで障害が広がっているか)
  • 障害の切り分け(NWか?サーバか?アプリか?)
  • ユーザー影響を最小化する(止血)
  • 復旧時間の見積りと関係者共有

🚨 2. 障害発生時の最優先タスク(3分以内)

① アラート内容の確認(監視・ユーザー報告)

  • どの機器が落ちた?(Ping監視、SNMP、Syslog)
  • どのサービスに影響?(Web、VPN、業務システム)
  • いつから発生?(タイムラインを把握)

② 影響範囲の特定

  • 全社?フロア?特定VLAN?特定サーバ?
  • ユーザー報告の共通項を確認

③ 緊急度の判断

  • 全社停止 → SEV1(最優先)
  • 一部ユーザー影響 → SEV2
  • 限定的影響 → SEV3

④ 関係者へ状況連絡(テンプレ)

【障害発生連絡】
発生時刻:XX:XX
事象:社内NW一部で通信不可
影響範囲:フロアXのPC / サーバY
対応状況:切り分け開始、次回更新XX:XX

担当:○○

🔍 3. 初動切り分けフロー(ネットワーク担当者向け)

① Ping確認(到達性の基本チェック)

ping 192.168.1.1
ping 8.8.8.8
ping example.com

結果の読み方:

  • GWまで通らない → クライアント/NW側の問題
  • GWは通るが外へ出れない → FW/NAT/ルーティング問題
  • IPは通るが名前解決不可 → DNSトラブル

② ネットワーク機器の状態確認

■ スイッチのポート状態

show interfaces status
show interfaces counters errors

見るポイント:

  • リンクダウンしているか
  • Err-disabled になっていないか
  • CRCエラー / Input error / Runts が多くないか

■ ARPテーブルの確認

show arp | include 192.168.1.
  • MACが変わり続けている → ループ or 異常端末
  • ARPが欠落している → スイッチ経路断、VLAN設定ミス

■ ルーティングの確認

show ip route
show ip route 10.10.20.0

チェック内容:

  • デフォルトルートが正しいか
  • OSPF/BGPが落ちていないか
  • ルートがブラックホールされていないか

🧪 4. よくある障害と即時の止血策

① 物理リンク断

  • ケーブル抜け・断線
  • パッチパネル不良

止血: 予備ケーブルでバイパス

② VLAN設定ミス

  • Trunkの許可VLAN間違い
  • Access VLAN不一致

止血: VLAN一致を即時修正

③ STPループ

  • 通信遅延・輻輳・MACフラッピング

止血:

  • 怪しいポートを shutdown
  • BPDU Guard / Loop Guard の有効化

④ DHCP障害

  • IPアドレス枯渇
  • DHCPリレー設定漏れ

止血: 一時的な静的IP割り当て

⑤ DNS障害

症状: IPは通るがURLアクセスが全滅

止血:

nslookup google.com 8.8.8.8

応急的に外部DNSへ切替

📊 5. 障害レポートに必須の項目(テンプレ付き)

■ 障害レポート

1. 障害発生日時  
2. 検知方法(監視 / ユーザー報告)  
3. 影響範囲  
4. 原因(一次 / 二次)  
5. 復旧作業  
6. 再発防止策  
7. タイムライン  
8. 関係者への周知内容  

🧩 6. 初動対応チェックリスト

  • [ ] Ping(GW → 外部)
  • [ ] スイッチポート状態
  • [ ] ARPテーブル
  • [ ] ルーティング
  • [ ] スイッチログ(Loop/MAC Flap)
  • [ ] Firewallログ
  • [ ] DNS応答
  • [ ] DHCP割当状況

💡 7. 現場で即使えるトラブルシュートセット(保存推奨)

show interfaces status
show interfaces counters errors
show mac address-table dynamic
show arp
show spanning-tree detail
show ip route
show logging | include ERR

まとめ

ネットワーク障害時は「原因究明よりも止血が先」という原則に従い、
本記事のチェックリストとコマンドセットを用いれば、誰でも安定した初動対応が可能になります。

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