「同じLAN内にあるはずのサーバーが見えない」「ping が返らない」「名前でアクセスできない」などのトラブルは、ネットワーク運用の現場で頻繁に発生します。
本記事では、サーバーが LAN 内で見えない時に確認すべきポイントを、原因 → 確認コマンド例 → 結果例 → 対処法 の流れで解説します。
■ サーバーがLAN内で見えない主な原因
- IPアドレス設定ミス(重複 / サブネット違い)
- NIC がダウンしている / ケーブル不良
- ARP が解決できていない(ARP不一致・欠落)
- VLAN 設定ミス(ポートの VLAN が違う)
- スイッチ側のポートが shutdown / err-disable
- サーバー側ファイアウォールがブロック
- 名前解決(DNS/WINS)トラブル
LAN 内のトラブルは原因が多岐にわたりますが、確認順序を固定することで効率的に切り分けできます。
■ ① サーバーの物理リンク状態を確認
LAN 内で見えない場合、まず物理リンクを確認するのが最速です。
● スイッチ側でリンクアップ確認
show interface status
【リンクダウンの例】
Gi1/0/10 notconnect 1 auto auto ---
→ ケーブル断線・NIC未接続の可能性。
● エラーカウンタ確認
show interface Gi1/0/10
【CRCエラーの例】
1000 CRC, 1000 input errors
→ ケーブル不良またはスピード/デュプレックス不一致。
■ ② サーバーのIP設定が正しいか確認
● Windows
ipconfig /all
● Linux
ip addr
ip route
【サブネット違いの例】
inet 192.168.20.10/24
gateway 192.168.10.1
→ セグメントが違うため同一LANからは見えない。
■ ③ ARP が正しく解決しているか確認
● 自端末からの ARP テーブル確認
arp -a
【ARPが解決していない例】
Interface: 192.168.1.20
Internet Address Physical Address Type
192.168.1.50 incomplete dynamic
→ サーバーが ARP リクエストに応答していない。
● スイッチ側で MAC 学習を確認
show mac address-table | include Gi1/0/10
【MAC未学習の例】
(空欄)
→ サーバーからフレームが一切届いていない。
■ ④ VLAN 設定が正しいか確認
サーバーが接続しているポートが、想定 VLAN と一致しているかチェックします。
show vlan brief
【誤った VLAN の例】
Gi1/0/10 VLAN 30 に所属(本来は VLAN 10)
→ サーバーの属するネットワークと通信不可。
■ ⑤ サーバー側のファイアウォールを確認
ping が返らない原因の多くがこれです。
● Windows
firewall.cpl
● Linux(firewalld)
firewall-cmd --list-all
【ICMP拒否の例】
icmp-block=echo-request
→ ping が通らず「見えない」ように見える。
■ ⑥ ルーティング・デフォルトゲートウェイの確認
同一LAN内でも、誤ったゲートウェイ設定で通信できないケースがあります。
● Windows
route print
● Linux
ip route
【誤った GW の例】
default via 192.168.100.1
→ 存在しないルータを指定している。
■ ⑦ 名前解決(DNS)が原因か確認
「ホスト名では見えないが、IPならアクセスできる」場合は DNS が原因です。
● nslookup / dig を使う
nslookup server01
dig server01
【DNS誤登録の例】
Name: server01
Address: 192.168.1.50 (本来は 192.168.1.80)
→ CNAME や A レコードのミス。
■ ⑧ スイッチ側ポートが err-disable になっていないか確認
ループ、BPDU Guard、ポートセキュリティなどで遮断される場合があります。
show interface status err-disabled
【err-disable の例】
Gi1/0/10 err-disabled psecure-violation
→ Port Security 違反で遮断されている。
■ 実例:サーバーがLAN内で見えなかった障害の復旧プロセス
【現場の症状】
- ping が通らない
- スイッチではリンクアップしている
- サーバー側ではネットワーク接続が有効
【確認】
arp -a
192.168.1.50 incomplete
→ ARP が解決できていない。
【スイッチ確認】
show mac address-table | include Gi1/0/10
(空欄)
→ サーバーからフレームが届いていない。
【原因】
サーバーNICの VLAN タグ設定ミス(802.1Q タグ付き)
【対処】
- OS側 NIC 設定から VLAN タグを削除
- Access ポートとして正しい VLAN に設定
【復旧結果】
ping 192.168.1.50
Reply from 192.168.1.50: bytes=32 time<1ms
→ サーバーは正常に LAN 内で認識されるようになった。
■ まとめ
- LAN内でサーバーが見えない時は「物理 → IP → ARP → VLAN → FW」の順が最速
- ARP incomplete は非常に重要なヒント
- 名前解決の問題も多い(DNS誤登録など)
- NIC側の VLAN タグ設定ミスは現場で非常に多い
正しい切り分け順を知っておくことで、トラブル対応が圧倒的に早くなります。




