LACP(Link Aggregation Control Protocol)/EtherChannel が形成されない場合、スイッチ間の帯域が細くなり、冗長性も失われます。本記事では、形成されない典型原因と、現場で使われる確認コマンド・結果例を用いて、問題切り分けの手順を分かりやすく解説します。
目次
■ LACP/EtherChannel が形成されない主な原因
- ポート設定の不一致(最も多い)
・スピード/デュプレックス
・VLAN の access / trunk の不一致
・allowed VLAN の違い - LACP モードのミスマッチ(active/passive/on)
- ポートチャネル番号の不一致
- Poの設定に対しメンバーポートで別設定が残っている
- LACP パケット(LACPDU)が相手に届いていない
- ケーブル不良・光モジュール不良
- 異なるポータル系(FEX)など HW 制限
■ 【ステップ別】形成されない時の確認手順
STEP1:ポートチャネルの状態を確認する
show etherchannel summary
結果例:
Group Port-channel Protocol Ports
------+-------------+-----------+-------------------------------------
1 Po1(SD) LACP Gi0/1(I) Gi0/2(P)
ステータスの意味:
- P(bundled) → 正常に参加している
- I(standalone) → 条件不一致で参加できない
- D(down) → 何かしらのリンク問題
ポイント:「I」になるポートが1つでもあると、LACP形成不可。
STEP2:各ポートの設定不一致を確認
EtherChannel ではポートごとの設定が完全一致している必要があります。
show run interface gi0/1
show run interface gi0/2
確認する項目:
- speed(100 / 1000 / auto)
- duplex(full / auto)
- switchport mode(access / trunk)
- allowed VLAN の不一致
- native VLAN の違い
- channel-group 設定の番号一致
設定差異がある場合の例:
Gi0/1 は trunk、Gi0/2 は access → 形成できない
Gi0/1 は VLAN 10,20、Gi0/2 は VLAN 20 のみ → 形成できない
STEP3:LACP モード(active/passive/on)を確認
show etherchannel port
LACP の正しい組み合わせ:
| 片側 | 相手 | 結果 |
|---|---|---|
| active | active | ○ |
| active | passive | ○ |
| passive | passive | ×(形成されない) |
| on | LACP(active/passive) | ×(LACP無効) |
例:両方 passive → LACP 形成されない。
STEP4:LACP パケットが受信できているか確認
show lacp neighbor
結果例:
Gi0/1 Partner 001e.f612.aa10 Port 1
Gi0/2 Partner 001e.f612.aa10 Port 2
neighbor が表示されない時の典型原因:
- ケーブル断線
- 光モジュール不良
- 相手が LACP になっていない(On になっている)
- ポートが err-disabled
STEP5:物理層の問題を切り分ける
show interface gi0/1
重要な確認項目:
- input errors / CRC errors → ケーブル不良
- Link-flap → モジュール不良・断線
- speed/duplex mismatch → 自動ネゴ失敗
エラーの例:
1000 input errors, 900 CRC, 20 frame
→ ほぼ物理層の問題。
STEP6:channel-group 設定が正しいか確認
両側で番号が一致していないと形成されません。
interface gi0/1
channel-group 1 mode active
interface gi0/2
channel-group 1 mode active
相手側:
interface gi0/1
channel-group 1 mode passive
番号が片側 1、片側 2 → 形成不可
STEP7:Po インターフェースに残存設定があるか確認
EtherChannel は Po(Port-channel)に設定すべき項目と メンバーポートに残してはいけない項目があります。
show run interface port-channel 1
NG例: メンバーポートに trunk 設定が残っている
interface gi0/1
switchport mode trunk ← 本来は Po1 に設定すべき
→ メンバーポートの trunk 設定は削除し、Po に移動
■ 形成されない時によくある原因 × 対策まとめ
| 原因 | 症状 | 対策 |
|---|---|---|
| VLAN 設定不一致 | I(standalone)が出る | allowed VLAN 設定を統一 |
| LACP モード不一致 | LACP neighbor が見えない | active / passive の組み合わせを統一 |
| 物理層障害 | CRC error / link-flap | ケーブル交換・モジュール交換 |
| ポート設定差異 | 一部ポートのみ I 状態 | speed / duplex / trunk 設定を統一 |
| Po と Gi の設定が混在 | チャネル形成失敗 | ポートチャネル側に設定集約 |
■ まとめ
LACP/EtherChannel の問題は、以下の順で確認すると最短で解決できます:
- EtherChannel summary のステータス確認
- メンバーポートの設定差異をチェック
- LACP モードの組み合わせ確認
- LACP neighbor の確認
- 物理層エラー確認
- Po と個別ポート設定の整合性確認
特にポートごとの設定不一致が最も多い原因です。 本記事の手順を使えば、現場でも即トラブル解決が可能になります。
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