スパニングツリープロトコル(STP)最適化と実務チューニング手法

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STPはレイヤ2ネットワークにおけるループ防止の基盤技術ですが、標準設定のままでは収束が遅く、冗長化構成時に予期せぬ通信断が発生するケースがあります。本記事では、現場ネットワークで活用できるSTP/RSTP/MSTPの最適化方法と、実務で重要なチューニング手法を詳しく解説します。

目次

1. STPの基本とループ発生の仕組み

レイヤ2スイッチングではブロードキャストや未知ユニキャストフレームがフラッディングされる仕組みのため、ループが発生するとフレームが無限増殖します。これにより以下の障害が発生します。

  • ネットワーク全体の通信遅延・パケットロス
  • スイッチCPU負荷の急増
  • MACアドレステーブルの揺らぎ
  • 最悪の場合、全社ネットワーク停止

STPはこれを防ぐために、リンク関係を解析し、ネットワーク全体がループしないようにツリー構造を形成します。主に以下の構成要素で最適経路を決定します。

  • ルートブリッジの選定
  • ルートポートの決定
  • 指定ポートの選定
  • ブロッキングポートの決定

2. STP / RSTP / MSTP の種類と違い

STP(802.1D)

  • 収束に30秒以上かかる
  • 現在では推奨されない

RSTP(802.1W)

  • 収束が1〜数秒と高速
  • 現場で最も採用されている

MSTP(802.1S)

  • 複数VLANをインスタンスにまとめて負荷分散可能
  • 大規模ネットワーク向け
環境推奨プロトコル
中規模以下、VLAN数少なめRSTP
大規模(100〜数百VLAN)MSTP
レガシー機器混在環境STP

3. ルートブリッジの最適化(最重要項目)

STP最適化で最も重要なのは「ルートブリッジを明示的に決める」ことです。デフォルト設定のままだと、

  • 電源を先に入れたスイッチ
  • 旧型スイッチ
  • 低性能スイッチ

などが勝手にルートブリッジになる危険があります。

推奨設定(Cisco)

! ルートブリッジ
spanning-tree vlan 1-100 priority 4096

! セカンダリ(バックアップ)
spanning-tree vlan 1-100 priority 8192

プライオリティは 4096刻みで設定するのが一般的です。

4. RSTP最適化に必須のポート設定

① Edgeポート(PortFast)設定

PC・サーバなどエンド端末向けポートには必ず設定します。

interface Gi1/0/10
 spanning-tree portfast
 spanning-tree bpduguard enable

メリット:

  • 即フォワーディングへ遷移(待ち時間ゼロ)
  • DHCP取得の安定化
  • 端末再起動時の接続不良防止

② BPDU Guard

PortFastとセットで使う安全装置。BPDU受信時にシャットダウンするため、誤配線によるループを防止できます。

5. 冗長構成で起こるSTPトラブルと対処法

■ ケース1:意図しないルートブリッジが発生

原因:

  • 電源投入順序
  • 新規スイッチのプライオリティが低い

対策:ルートスイッチとバックアップのプライオリティを明示設定

■ ケース2:切替時に数秒通信断が発生

原因:

  • PortFast未設定
  • STPインスタンス数過多

対策:

  • RSTP/MSTPに移行
  • Edgeポート設定の徹底

■ ケース3:Loop発生でフロア全停止

現場で多いパターン:

  • 会議室に安価ハブを挿される
  • LANケーブル誤接続でループ発生
  • BPDU Guard未設定

対策:

  • BPDU Guard導入
  • Root Guardの適用(上位方向安定化)

6. MSTPを使った大規模ネットワーク最適化

MSTPでは VLAN を複数のインスタンスにまとめることが可能です。

メリット

  • インスタンスごとに別ルートを設定でき負荷分散が可能
  • STP計算の効率化により高速収束

例:VLANを2系統に分けて負荷分散

  • MSTI1:ルートブリッジ=Core1
  • MSTI2:ルートブリッジ=Core2

7. 本番ネットワークでのSTP検証手順

① トポロジ図の作成

STPは論理関係が見えにくいため、事前にネットワークマップを作ることが重要です。

② showコマンドでポートロール確認

show spanning-tree
show spanning-tree detail
show spanning-tree interface status

確認ポイント:

  • ルートブリッジが正しいか
  • ブロッキングポートが想定通りか
  • Root Port が意図通りか

③ 冗長リンクの切断テスト

リンクを片側切断し、以下を確認します。

  • フォールオーバーにかかる時間
  • 疎通テスト(Ping、アプリ動作)
  • ログの異常有無
  • ポートロールの切替が適切か

8. まとめ:STP最適化で重要なポイント

  • ルートブリッジを明確に決める
  • RSTPを標準、VLAN多いならMSTP
  • Edgeポート+BPDU Guardの徹底
  • フェイルオーバーテストの実施
  • ログ監視で異常検知を早期化

STPは地味な機能ですが、正しく設計しないとネットワーク全停止につながる重要技術です。本記事の手法を押さえれば、現場で堅牢なL2ネットワークを構築できるようになります。

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