企業ネットワークでは、拠点同士を安全に接続する「拠点間VPN」と、自宅や外出先から社内へアクセスする「リモートVPN(SSL VPN / IPsec VPN)」の活用が一般的です。本記事では、両者の役割の違い、利用シーン、構成ベストプラクティスを実務目線で解説します。
目次
拠点間VPNとリモートVPNの違い
まずは、両者の特徴と用途を明確に比較します。
拠点間VPN(Site-to-Site VPN)
- 用途:拠点同士の常時接続(本社 – 支社、データセンターなど)
- 方式:主にIPsec VPN
- 接続形態:ルータ・FW同士が自動でトンネルを維持
- メリット:安定した常時接続、運用コストが低い
- デメリット:可用性確保には冗長化設計が必要
リモートVPN(Client-to-Site VPN)
- 用途:社員のテレワークや外出先からのアクセス
- 方式:SSL VPN / IPsec クライアントVPN
- 接続形態:PCやスマホにVPNクライアントをインストールして接続
- メリット:外部環境から安全に社内にアクセスできる
- デメリット:ユーザごとに帯域負荷が発生、認証強化が必須
比較表(要点を簡潔に整理)
| 項目 | 拠点間VPN | リモートVPN |
|---|---|---|
| 接続対象 | 拠点と拠点 | ユーザ端末と本社 |
| 主な用途 | 拠点の常時接続 | テレワーク・外出先 |
| 主な方式 | IPsec | SSL / IPsec |
| 冗長化 | VPN機器の冗長化が必須 | 認証強化と帯域設計が重要 |
拠点間VPNの構成ベストプラクティス
1. IPsecトンネルの冗長化(2本化)
本社側・支社側のルータまたはFWを二重化し、トンネルを2本確保する設計が推奨されます。
本社 FW1 --- トンネル1 --- 支社 FW1
本社 FW2 --- トンネル2 --- 支社 FW2
同一機器障害・経路障害のどちらにも対応できる構成です。
2. IKEv2 の採用
IPsecのネゴシエーションでは、古い IKEv1 ではなく、高速・安定・再接続に強い IKEv2 を推奨します。
3. BGP を併用した経路制御
複数トンネルを利用する場合や、DC-本社間で冗長経路を持つ場合は、IPsec上でBGPを流す設計が有効です。
- トンネルダウン時に自動で経路切り替え
- ルーティング管理が簡潔になる
4. 帯域設計の重要性
拠点間VPNは常時通信のため、以下の帯域を確保する必要があります。
- バックアップトラフィック量
- ファイル転送・バックアップジョブ
- 業務アプリのピークトラフィック
リモートVPNの構成ベストプラクティス
1. SSL VPN の採用
近年は IPsec Client VPN よりも、ポート制限に強いSSL VPNが主流です。
- Webポート(443)を利用するため接続成功率が高い
- NAT越えに強い
2. 多要素認証(MFA)の必須化
リモートVPNは外部接続のため、パスワードだけでは不十分です。必ず MFA を組み込む設計を推奨します。
3. アクセス制御(ゼロトラスト志向)
「全社LANへ接続してすべてアクセス可能」という旧来のVPN設計はリスクがあります。
- 部門ごとの VLAN / サブネットに分割
- ACL・FWポリシーで業務必要最小限へ絞る
- AD属性に基づいたアクセスコントロール
4. 帯域のスケールを考慮した設計
ユーザ数が増えるほど、VPN装置への負荷は跳ね上がります。
- ピーク時の同時接続数の把握
- 装置のスループットの余裕(実測で70%以下)
- クラウド型VPNの検討(Azure VPN Gateway 等)
用途別:どちらを選ぶべきか
拠点間VPNとリモートVPNを利用する場面は明確です。
拠点間VPNを選ぶべきケース
- 拠点 – 本社間でファイルサーバやDBを日常的に利用する
- 監視・ログ収集など常時通信が必要
- 拠点ネットワークを企業LANとして統一したい
リモートVPNを選ぶべきケース
- テレワークの社員が多い
- 外出先から安全にアクセスしたい
- 在宅勤務環境をローコストで導入したい
推奨構成まとめ
拠点間VPN
- IPsec(IKEv2)
- FW/ルータの冗長化 + トンネル2本化
- BGPを併用した経路制御
リモートVPN
- SSL VPN
- MFA 必須化
- ゼロトラスト型アクセス制御
- VPN装置のスケール設計
まとめ
拠点間VPNとリモートVPNは目的が明確に異なります。実務では両者を併用し、拠点間の安定接続と、ユーザの柔軟な外部アクセスを両立させる構成が一般的です。特にセキュリティ要件が高まっている現在では、ゼロトラストを意識した認証強化・アクセス制御が欠かせません。
本記事の内容を参考に、貴社のネットワーク要件に合わせて最適なVPN構成を検討していただければと思います。
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