LACP / EtherChannel / Link Aggregation(リンク集約技術)

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ネットワークの通信速度や冗長性を高める技術として、リンクアグリゲーション(Link Aggregation)があります。 特に、スイッチ間やサーバ接続で多く使われるのが EtherChannelLACP(Link Aggregation Control Protocol)です。 この記事では、それぞれの仕組み・動作原理・設定例をわかりやすく解説します。

目次

1. リンクアグリゲーションとは?

リンクアグリゲーションとは、複数の物理回線(Ethernetリンク)を1本の論理回線として束ねる技術です。 これにより、以下のような効果が得られます。

  • 帯域の拡張:複数リンクの合計帯域を利用可能
  • 冗長性の確保:1本のリンクが切断されても通信を継続できる
  • 負荷分散:複数の通信フローをリンク間で分散

イメージ図(文字表現)

[Switch A]===2本のケーブル=== [Switch B]
     ↓ 論理的には1本のリンクとして扱われる

このように、2本以上の物理リンクを「1本の仮想インターフェース」として扱うことで、 高可用かつ高速なネットワークを実現します。

2. EtherChannelとは

Cisco機器でのリンクアグリゲーション技術をEtherChannel(イーサチャネル)と呼びます。 EtherChannelは、複数の物理ポートをまとめて1つの論理ポート(ポートチャネル)として動作させます。

  • EtherChannelはCisco独自の実装
  • スタティック(手動設定)またはLACP/PAgPで動作可能
  • ロードバランスはハッシュ値(MAC/IP/TCPなど)で自動的に振り分け

EtherChannelの論理構成

物理ポート: Fa0/1, Fa0/2, Fa0/3, Fa0/4
↓
論理ポート: Port-channel 1 (Po1)

管理上は Port-channel インターフェースを操作すれば、 まとめられた複数ポートが一括で制御されます。

3. LACPとPAgPの違い

EtherChannelを自動的に構築するための制御プロトコルには、以下の2種類があります。

項目LACPPAgP
正式名称Link Aggregation Control ProtocolPort Aggregation Protocol
標準化団体IEEE 802.3ad(IEEE標準)Cisco独自
互換性マルチベンダーで利用可Cisco機器間のみ
動作モードactive / passivedesirable / auto
推奨利用異なるベンダー間での接続Cisco製品同士

現在では、マルチベンダー環境で動作するLACPの使用が主流です。

4. LACPの動作モード

LACPには2つのモードがあります。

  • activeモード:LACPネゴシエーションを積極的に開始する
  • passiveモード:相手からのLACPネゴシエーションを待つ

接続成立の組み合わせ

片側反対側結果
activeactiveリンク集約 成立
activepassiveリンク集約 成立
passivepassive成立しない

つまり、少なくとも片側を active に設定する必要があります。

5. Ciscoスイッチでの設定例

以下は、Cisco IOS で LACP を使って EtherChannel を構成する例です。


SwitchA(config)# interface range fastEthernet0/1 - 2
SwitchA(config-if-range)# channel-group 1 mode active
SwitchA(config-if-range)# exit
SwitchA(config)# interface port-channel 1
SwitchA(config-if)# switchport mode trunk

上記の設定では、Fa0/1〜Fa0/2を「Port-channel 1」として束ね、 LACP(activeモード)で自動的にリンクを協調動作させます。

確認コマンド


SwitchA# show etherchannel summary
SwitchA# show lacp neighbor

これらのコマンドで、リンク集約の状態やLACPの隣接情報を確認できます。

6. トラブル時のチェックポイント

  • 両スイッチで設定モード(active/passive)が正しいか
  • 物理ポートの設定(VLAN, duplex, speed)が一致しているか
  • ポート番号や範囲指定が一致しているか
  • 片方がshutdown状態ではないか
  • show etherchannel summary で「P」(in port-channel) 状態を確認

代表的なエラー表示

EtherChannel misconfiguration detected
→ ポート設定の不一致が原因でチャネル形成に失敗

7. LACP / EtherChannel / Link Aggregation の違いまとめ

項目Link AggregationEtherChannelLACP
意味複数リンクを束ねる概念・技術全体Ciscoの実装名IEEE標準プロトコル(802.3ad)
標準化IEEE 802.1AX / 802.3ad独自実装IEEE標準
自動ネゴシエーションあり(プロトコル依存)LACP / PAgP / manualあり(active/passive)
ベンダー間互換性ありなし(Cisco専用)あり

8. まとめ:信頼性と性能を両立する重要技術

リンクアグリゲーションは、ネットワークの帯域拡張冗長化を同時に実現する重要な技術です。 特にLACPを活用すれば、異なるベンダー間でも柔軟にリンク集約を構成できます。

  • 小規模環境:スタティックEtherChannelで簡易構成
  • 中〜大規模環境:LACPで自動制御&フェイルオーバ対応
  • Cisco限定構成:PAgPを使用(非推奨)

対応表まとめ

目的推奨方式理由
マルチベンダー環境LACPIEEE標準で互換性が高い
Cisco機器間のみEtherChannel(LACP or PAgP)Ciscoの機能を最大限活用できる
単純な帯域集約スタティック設定構成が簡単で安定動作
冗長性と自動化重視LACP(activeモード)リンク障害検知が自動で行える

以上、この記事では LACP / EtherChannel / Link Aggregation の仕組みと設定例を解説しました。 これらはネットワーク設計・CCNA試験の重要トピックであり、実務でも非常に多く登場します。

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