トラフィックシェーピングとポリシングの違いと使い分け

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ネットワーク設計やCCNA学習の中で、QoS(Quality of Service)の一部として必ず登場するのが トラフィックシェーピング(Traffic Shaping)ポリシング(Policing)です。
どちらも「通信速度や帯域を制御する」技術ですが、目的や動作の仕組みが大きく異なります。 この記事では、両者の違いをわかりやすく整理し、設定例や使い分けのポイントまで丁寧に解説します。

目次

1. トラフィック制御とは?

インターネットや社内ネットワークでは、限られた帯域を多くの通信が共有します。
そのため、動画や音声、業務システムなどの重要通信を安定させるために 「QoS(通信品質の制御)」が必要です。

QoSで扱う代表的な帯域制御技術が以下の2つです。

  • トラフィックシェーピング(Traffic Shaping):送信側で通信速度を調整
  • トラフィックポリシング(Traffic Policing):違反パケットを破棄またはマーキング

この2つは「制御する側」と「処理方法」が異なるため、混同しないようにすることが重要です。

2. トラフィックシェーピングの仕組み

トラフィックシェーピングとは、送信側でパケットの送信タイミングを調整し、 帯域を超えるトラフィックを一時的にバッファ(キュー)にためてから送信する仕組みです。 いわば「送信側で渋滞を防ぐ」技術です。

特徴

  • 送信側で帯域を制御する
  • 超過分のパケットを削除せず、一時的に遅延させて送信
  • 回線の安定性を保ちながらスムーズに通信できる

シェーピングのイメージ図(文字表現)

[送信側]───(バッファで制御)───[ネットワーク]
   ↑             ↑
  パケット     超過分は一時保存して遅延送信

Cisco IOS 設定例


interface Serial0/0
  traffic-shape rate 512000

上記の例では、インターフェースの送信速度を512kbpsに制限し、 それ以上のパケットはバッファに蓄積して遅延送信します。

3. トラフィックポリシングの仕組み

トラフィックポリシングは、帯域制限を超えた通信を破棄またはマーキングする仕組みです。 送信側で抑制するのではなく、受信インターフェースなどで「ルール違反の通信を処罰する」形になります。

特徴

  • 超過パケットは破棄(drop)または低優先度(mark down)に変更
  • 即時制御であり、バッファは使用しない
  • リアルタイム性が重視される環境では使いづらい(パケット損失が発生)

ポリシングのイメージ図(文字表現)

[送信側]───[受信側:Policer]
                  ↓
       超過分 → Drop または 優先度Down

設定例(Cisco IOS)


policy-map POLICE_1M
 class class-default
  police 1000000 8000 exceed-action drop

上記設定では、1Mbpsを超える通信を破棄します。 バッファせずに即座に制限をかけるため、通信の安定性よりも厳格な帯域管理が優先される環境に向いています。

4. トラフィックシェーピングとポリシングの比較表

項目トラフィックシェーピングトラフィックポリシング
制御位置送信側受信側または中継ノード
帯域超過時の動作パケットを一時バッファに保持して遅延送信パケットを破棄またはマーキング
遅延発生する(バッファで待機)ほぼなし
損失なし(バッファオーバーフロー時を除く)発生する(dropされる)
用途送信トラフィックを整流化、安定通信帯域制御・制限を厳密に enforce

5. シェーピングとポリシングの使い分け

どちらを使うかは、ネットワークの目的によって異なります。

  • 通信を滑らかに制御したい場合:トラフィックシェーピング
  • 厳密に帯域制限を enforce したい場合:ポリシング
  • ISP や企業の境界ルータでは、契約帯域を守るためポリシングがよく使われる
  • 内部ネットワークで安定通信を維持したい場合は、シェーピングが適している

6. まとめ:どちらもQoSの重要な柱

トラフィックシェーピングとポリシングは、QoSの中核技術としてネットワーク安定化に欠かせません。
特に企業ネットワークやクラウド間接続では、これらを適切に使い分けることで 通信遅延や帯域圧迫を防ぎ、全体のパフォーマンスを最適化できます。

対応表まとめ

状況推奨技術理由
通信を滑らかに流したいトラフィックシェーピングバッファで一時保管しスムーズに送信
帯域を超える通信を制限したいトラフィックポリシング即時に破棄またはマーキングして制御
回線安定性を優先トラフィックシェーピング再送を防ぎ、遅延で調整
契約帯域を厳守したいトラフィックポリシング超過分を破棄するため厳密な制御が可能
目次