インターネットの根幹を支える通信プロトコルには「IPv4」と「IPv6」の2種類があります。
IPv4のアドレス枯渇問題を解決するためにIPv6が登場しましたが、現在も両者は併用されています。
本記事では、IPv4とIPv6の違い・アドレス構造・通信方式・移行技術(デュアルスタック/トンネリングなど)についてわかりやすく解説します。
1. IPv4とIPv6の基本概要
IPv4(Internet Protocol version 4)は1980年代から利用されているインターネットの基礎技術で、約43億個のアドレスを扱えます。
一方、IPv6(Internet Protocol version 6)は次世代の通信規格として登場し、ほぼ無限ともいえる2の128乗という膨大なアドレス空間を持ちます。
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| アドレス長 | 32ビット | 128ビット |
| 表記形式 | 10進数(例:192.168.1.1) | 16進数(例:2001:db8::1) |
| アドレス数 | 約43億個 | 約3.4×1038個 |
| アドレス割り当て | 手動/DHCP | 自動(SLAAC)やDHCPv6 |
| ヘッダ構造 | 可変長(オプション含む) | 固定長(40バイト) |
| セキュリティ | IPsecは任意 | IPsecが標準組み込み |
2. IPv4アドレスの構造
IPv4は32ビットの値を8ビットごとに4つのブロックに分け、「.」(ドット)で区切って表記します。
IPv4: 192.168.1.10
(2進数)11000000.10101000.00000001.00001010
アドレスは「ネットワーク部」と「ホスト部」に分かれ、サブネットマスクにより範囲が決定されます。
3. IPv6アドレスの構造
IPv6は128ビットの値を16ビットごとに8ブロックに分け、「:」(コロン)で区切ります。
IPv6: 2001:0db8:0000:0000:0000:ff00:0042:8329
省略形: 2001:db8::ff00:42:8329
IPv6の省略ルール
- 連続する「0000」は「:」を2つで「::」と省略可能(1回のみ)
- 先頭の「0」は省略可能(例:0db8 → db8)
IPv6アドレスの種類
| 種類 | プレフィックス | 説明 |
|---|---|---|
| ユニキャスト | 2000::/3 | 一意の1台を識別(グローバル通信) |
| リンクローカル | fe80::/10 | 同一リンク内限定(ルータを超えない) |
| ユニークローカル | fc00::/7 | プライベート用途(IPv4の192.168.x.xに相当) |
| マルチキャスト | ff00::/8 | 複数ノード宛の同時通信 |
4. IPv6の主な特徴
- アドレス枯渇の解消: ほぼ無限のアドレス空間
- 自動設定機能(SLAAC): DHCP不要で自己割り当て可能
- IPsec標準化: 通信の暗号化がプロトコルレベルでサポート
- ルータ負荷の軽減: NAT不要、エンドツーエンド通信の復活
- ヘッダのシンプル化: 高速転送を実現
5. IPv4とIPv6の共存と移行技術
現在、すべてのネットワーク機器やISPがIPv6対応しているわけではないため、IPv4とIPv6の共存・移行が重要になります。
① デュアルスタック(Dual Stack)
同一機器でIPv4とIPv6を同時に動作させる方式。最も一般的な移行方法です。
- IPv4/IPv6両方のアドレスを保持
- 通信先の対応に応じて自動選択(DNS解決時)
- ISPやルータの設定が必要
② トンネリング(Tunneling)
IPv6パケットをIPv4ネットワーク内にカプセル化して転送する方式です。
| 方式 | 説明 |
|---|---|
| 6to4 | IPv4のパブリックアドレスを利用してIPv6通信を実現 |
| Teredo | NAT環境下でもIPv6通信を可能にする |
| ISATAP | 企業LAN内でIPv6導入を容易にする |
③ NAT64 / DNS64
IPv6ネットワークからIPv4宛の通信を可能にする仕組み。
DNS64がAAAAレコードを生成し、NAT64がIPv4アドレスに変換して中継します。
[IPv6端末] → [NAT64ゲートウェイ] → [IPv4サーバ]
6. IPv6移行の課題
- 古いネットワーク機器がIPv6非対応
- 一部アプリケーションやVPNがIPv6未対応
- セキュリティポリシー(FW / ACL)の見直しが必要
- トラブル時の可視化や監視体制が整っていない
7. まとめ
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| アドレス長 | 32ビット | 128ビット |
| アドレス数 | 約43億 | 3.4×1038 |
| 設定方式 | 手動/DHCP | SLAAC/DHCPv6 |
| セキュリティ | IPsec任意 | IPsec標準 |
| 移行方式 | – | デュアルスタック/トンネリング/NAT64 |
IPv6は単なる新しいアドレス体系ではなく、セキュリティ・自動設定・エンドツーエンド通信といったインターネット本来の姿を取り戻す技術です。
CCNAレベルでは、IPv6アドレスの構造・省略ルール・デュアルスタック構成をしっかり理解しておきましょう。


