PPPoE / PPP 接続の仕組みとトラブル対応

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インターネット接続の基本となる仕組みの一つが PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet) です。特に家庭や企業がISP(インターネットサービスプロバイダ)に接続する際に広く利用されています。
本記事では、PPP / PPPoEの基本原理、通信の流れ、認証方式、代表的なトラブルとその対処方法についてわかりやすく解説します。

目次

1. PPP(Point-to-Point Protocol)とは

PPPは、2点間の通信を確立し、安全にデータをやり取りするためのプロトコルです。もともとは電話回線などのシリアル通信で利用されていました。

PPPの主な機能

機能説明
認証(Authentication)PAPやCHAPによるユーザー認証を実施
圧縮(Compression)データ圧縮による通信効率の向上
エラーチェック通信品質を維持するためのチェック
IPアドレス割り当て接続時にクライアントへIPを付与

PPPの通信は「ユーザー認証 → リンク確立 → データ転送」という流れで行われます。

2. PPPoEとは

PPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)は、PPPをイーサネット(LAN)上でカプセル化して使う仕組みです。
光回線やADSLなどのブロードバンド接続でISPにアクセスする際の標準的な方式として採用されています。

PPPoEの構造

Ethernet Header
   ↓
PPPoE Header
   ↓
PPP Frame
   ↓
IP Packet

PPPoEの特徴

  • LAN上でもPPP認証が利用できる
  • ユーザー名とパスワードによるISP認証
  • ISP側で課金や接続管理が容易
  • IPv4 / IPv6の両方に対応

3. PPPoEの通信フロー

PPPoEは2段階のフェーズで動作します。

① Discovery Phase(セッション確立)

クライアントがISP側のAC(Access Concentrator)を検出し、セッションを確立します。

手順フレーム名役割
PADIクライアントがACを探索(ブロードキャスト)
PADOACが応答し、利用可能であることを通知
PADRクライアントが接続要求を送信
PADSACがセッションIDを割り当て、接続確立

② Session Phase(PPP通信)

  1. LCP(Link Control Protocol):リンクパラメータを交渉(例:MRU)
  2. PAP / CHAP 認証:ISP側でユーザー認証を実施
  3. IPCP(IP Control Protocol):IPアドレスを割り当てて通信開始

4. 認証方式(PAP / CHAP)

項目PAPCHAP
認証方法平文でユーザー名・パスワード送信チャレンジレスポンス方式
セキュリティ弱い(盗聴リスクあり)強い(ハッシュ化される)
使用例古い機器現在主流(PPPoE標準)

5. PPPoE接続でよくあるトラブルと対応策

① 認証エラー(ユーザー名・パスワード誤り)

症状:「認証に失敗しました」「接続できません」などのメッセージ。

  • ユーザー名・パスワードを再確認
  • ISP側の認証サーバ障害を確認
  • ルータ設定を初期化し再設定

② IPアドレスが割り当てられない

症状:接続は成功しているが通信できない。

  • 接続方式がDHCPではなくPPPoEになっているか確認
  • モデム・ONUを再起動(セッション解放)
  • 同一アカウントでの多重接続を確認

③ 接続が頻繁に切れる

  • MTU値の不一致(標準1492)
  • ISP側のタイムアウト設定
  • ONUやルータの不安定動作

対策:MTUを1454〜1492に調整、ファーム更新、再起動。

④ セッション確立失敗(PADI/PADOが通らない)

症状:「ACが見つからない」「接続タイムアウト」

  • LANケーブルやONUの物理接続を確認
  • ルータのVLAN設定・PPPoEパススルーを確認
  • PC直結で試験してみる

6. MTU値と通信トラブル

PPPoEでは、通常のEthernet(MTU:1500)より8バイト小さい「MTU:1492」が標準です。
MTUが大きすぎると、パケットが分割される(フラグメント)か破棄され、特定サイトが開かない・速度が遅いといったトラブルを引き起こします。

対策例

  • ルータのMTU値を1454~1492に設定
  • Pingコマンドで最適値を確認(例:ping 8.8.8.8 -f -l 1454

7. まとめ

項目内容
PPP認証・リンク確立を行う基本プロトコル
PPPoEPPPをEthernet上で動かす仕組み(ISP接続用)
認証方式PAP(平文)/CHAP(ハッシュ)
代表的トラブル認証失敗、IP未割当、切断、MTU不一致など
主な対応策再設定、再起動、MTU調整、ISP確認

PPPoEは一見古い技術のように思われますが、現在でもISP接続やVPN通信など、多くの場面で利用されています。
通信経路の理解やMTU調整の知識は、ネットワークエンジニアにとって必須スキルといえるでしょう。

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