ネットワークで通信を行う際、パケットがどの経路を通るかを決めるのが「ルーティングテーブル」です。 その中でも特に重要なのが「デフォルトルート(Default Route)」です。 本記事では、ルーティングテーブルの基本構造と、デフォルトルートの役割・設定方法を具体的に解説します。
デフォルトルートとは?
デフォルトルートとは、ルーティングテーブルの中で「どのネットワークにも一致しない宛先に対して使用する経路」です。 つまり、最終手段の経路(逃げ道)として使われます。
例えると、以下のようなイメージです:
特定の住所(宛先IP)が登録されていれば → その経路を使う
登録がなければ → デフォルトルート(0.0.0.0/0)を使う
一般的に、デフォルトルートは「インターネットゲートウェイ(ルータ)」や「上位ネットワーク」を指します。
ルーティングテーブルの仕組み
ルーティングテーブルには、宛先ネットワークごとに「どの経路で送るか」が登録されています。 Linuxでは以下のように確認できます。
$ ip route show
default via 192.168.1.1 dev eth0
192.168.1.0/24 dev eth0 proto kernel scope link src 192.168.1.10
出力の意味:
項目 | 説明 |
---|---|
default | デフォルトルート(全ての宛先にマッチ) |
via 192.168.1.1 | 次ホップ(ゲートウェイ)のアドレス |
dev eth0 | 使用インターフェース |
デフォルトルートの設定方法(Linux)
一時的に追加する場合(再起動で消える)
$ sudo ip route add default via 192.168.1.1 dev eth0
確認:
$ ip route show
default via 192.168.1.1 dev eth0
削除する場合:
$ sudo ip route del default via 192.168.1.1
永続的に設定する場合
ディストリビューションによって方法が異なります。
OS | 設定ファイル | 例 |
---|---|---|
CentOS / RHEL 系 | /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0 | GATEWAY=192.168.1.1 |
Ubuntu / Debian 系 | /etc/netplan/01-netcfg.yaml | routes: - to: 0.0.0.0/0 via: 192.168.1.1 |
設定後は再起動またはネットワーク適用コマンドを実行します。
$ sudo systemctl restart network
# または
$ sudo netplan apply
デフォルトルートの設定例(Cisco機器)
Ciscoルータでは、以下のように設定します。
Router(config)# ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1
確認:
Router# show ip route
Gateway of last resort is 192.168.1.1 to network 0.0.0.0
削除:
Router(config)# no ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1
デフォルトルートが正しく動作しない場合の確認ポイント
確認項目 | 正常な状態 | 異常な状態/対処 |
---|---|---|
ip route show の出力 | default via ~ が表示される | 表示されない → デフォルトルート未設定。再設定。 |
ゲートウェイ疎通確認 | ping 192.168.1.1 が応答あり | 応答なし → NIC設定・ケーブル・FWを確認 |
DNS 解決 | ping google.com が通る | 名前解決エラー → /etc/resolv.conf の設定を確認 |
複数NIC構成時の競合 | デフォルト経路が1つ | 複数defaultがある → ルーティング競合。片方削除。 |
ルーティングテーブルの優先順位
複数のルートがある場合、最も一致範囲が狭い(CIDRが長い)経路が優先されます。
宛先ネットワーク | 優先順位 |
---|---|
192.168.1.10/32(ホスト単位) | 最優先 |
192.168.1.0/24 | 中 |
0.0.0.0/0(デフォルトルート) | 最も低い |
そのため、特定の宛先を直接指定するルートを追加すると、 デフォルトルートより優先的に使われます。
まとめ:デフォルトルート設定の対応表
目的 | 設定例 | 確認コマンド |
---|---|---|
Linux 一時設定 | ip route add default via 192.168.1.1 | ip route show |
Linux 永続設定 | GATEWAY=192.168.1.1 | systemctl restart network |
Cisco 機器設定 | ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.1.1 | show ip route |
デフォルトルートは「すべての通信の最終出口」を決める重要な設定です。 ネットワークの出口が正しく指定されていないと、外部通信(インターネットなど)が全く行えなくなります。 ルーティングテーブルを理解し、デフォルトルートの役割を明確に把握しておきましょう。